酸素の電子からエネルギー損失がない電極材料を開発 東大

2021年2月1日 07:55

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酸素の電子を使っても熱としてエネルギーを失うことなく、電気エネルギーを蓄えられる電極材料Na2Mn3O7のイメージ図(東京大学の発表資料より)

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 東京大学工学系研究科の研究チームは1月29日、酸素の電子を使っても熱としてエネルギーを失うことなく、電気エネルギーを蓄えられる電極材料を発見したと発表した。

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 電極に使われる電極材料は、放電により酸素原子が結合し、エネルギーが放出される欠点があったが、研究チームは蓄積した電力エネルギーをそのまま利用できる電極材料の開発を実現した。再生可能エネルギー利用の場での活躍が活用される。

 自然エネルギーの活用と電極材料は密接な関係にある。自然エネルギーを産業や日常消費に安定して供給できる電池とするため、電気エネルギーを蓄える機能を果たす電極材料が使われているためだ。エネルギー蓄積容量を持つ電極材料の開発が、太陽電池などの質向上の鍵となっており、研究者による開発が日夜進められている。

 電極材料の開発の中で重要だと位置付けられているのが、遷移金属酸素物の高容量化だ。遷移金属酸素物は、磁性体の代表格で、絶縁体や半導体、金属の高性能化に大きな影響を及ぼすとされる。このため研究者たちは、遷移金属酸素物に含まれる酸素の電子を電力貯蔵に利用する試みを行ってきた。

 しかし酸素の電子は、結合しやすい特性があることから、蓄積した電気エネルギーを熱エネルギーとして大量に失うため、電力貯蔵の効率が低く、実用化が難しい欠点があった。研究チームは、そうした欠点を踏まえ、研究開発に注力。結果、電気エネルギーがほとんど失われることがない電極材料Na2Mn3O7の開発に成功した。

 電極材料は通常、電流が流入、流出する過程で酸素原子の電子が放出され、構造が不安定化しやすい。ところがNa2Mn3O7は、酸素原子の電子が放出された状態(リガンドボール)が安定的に存在するため、エネルギーの損失なく、電気エネルギーを貯蔵できるという。

 また研究チームは、Na2Mn3O7の充電、放電の間の電圧差を引き下げることで、電気エネルギーの損失を少なくさせた。充電、放電にかかる電圧差はそれぞれ0.04Vと0.03V。非常に小さく、電気エネルギーのロス回避に貢献しているという。

 研究チームは、「酸素の電子をエネルギー損失なく、電気エネルギー貯蔵に利用できる、という新しい現象を見出した」としている。酸素原子の結合形成に起因するエネルギー損失を防げる電極材料の開発を加速させることで、「電池の高容量化が実現する」と強調している。

 文科省の元素戦略プロジェクトなどによる支援を受けた研究の成果は、英国学術誌「ネイチャー・コミュニケーション」電子版に掲載されている。(記事:小村海・記事一覧を見る

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