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「バイデノミクス」とトランプ大統領のマキビシ 後編
このような、バイデン政権に足かせとなる動きは政権終盤の外交政策でも見られており、今年に入って政権交代間際となっても、イランへの制裁強化や台湾との接触制限無効化などが政策として行われている状況だ。
【前回は】「バイデノミクス」とトランプ大統領のマキビシ 前編
つまり、バイデン政権は終息の兆しが見えないコロナ対策だけではなく、トランプ大統領が撒いたマキビシの回収をしながら「グローバリズムへの回帰」を進めなければならない。法人税増税やGAFA規制を公約としているバイデン政権が「トリプルブルー」を勝ち取ったにも関わらず、株価が堅調であることは、これらの様々な足かせで動きが鈍ったバイデン政権が、経済対策の後に控えている規制の着手までたどり着けないという見通しが見え隠れする。
さて、その経済対策である「バイデノミクス」については、10年で10兆ドルを超えるとも試算されるほどの巨額な歳出の計画である。20年12月末に成立した9000億ドルの経済対策に加えて、年明けには1人あたり1,400ドルの現金給付や、失業給付の加算延長などを盛り込んだ1.9兆ドル規模の追加経済対策を発表している。
かのフランクリン・ルーズベルトが、約90年前に世界恐慌を克服するために行ったニューディール政策のようなインパクトを持つとはいえ、当時行われたニューディール政策は、議会の反対や、財政赤字によるインフレと債務増大への対策(金融引き締め)を急いだことで、失業率が一時的に再上昇してしまった。
しかしながら、今回バイデン政権の財務長官に白羽の矢が立ったイエレン前FRB議長が控えていることは、大きなポイントだ。金融緩和にハト派であり、リーマンショックに対して行われた大規模緩和「QE3」を見事混乱なく出口に導いた人である。つまり、金融引き締めが相当以上先になる可能性が、ここにも見え隠れする。
コロナ禍を乗り越えるための財政支援は必要である一方で、コロナバブルとも揶揄されている中での追加経済対策がお金の飽和を増大させ、株高だけではなく仮想通貨の暴騰も起こっている状況だ。お金が経済の血液として正しく循環しなければ、貧富の格差を生むだけではなく、実体経済との乖離やゾンビ企業の救済にすらつながりかねないというリスクは大きい。
ギリギリの「トリプルブルー」であるバイデン政権は、議会にてこれらの懸念を払しょくさせつつ、トランプ大統領のマキビシを回収するための議案を通しながらも、今後の財政支援を円滑に通過させていくことができるのだろうか。また、次のステップである法人税増税やGAFA規制にたどり着けるのだろうか。
バイデン政権の公約の実現スピードについては、ワクチンの普及と同等に注目すべきであり、株式市場の転換期を示すものとなるだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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