小惑星「リュウグウ」のサンプル分析 NASAでも調査へ準備進める

2020年12月14日 16:57

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豪州に落下したマーチソン隕石の試料から有機化合物を抽出した様子。水に浸し有機化合物を抽出する。(c) NASA's Goddard Space Flight Center/Eric T. Parker

豪州に落下したマーチソン隕石の試料から有機化合物を抽出した様子。水に浸し有機化合物を抽出する。(c) NASA's Goddard Space Flight Center/Eric T. Parker[写真拡大]

 小惑星探査機「はやぶさ2」は12月6日、小惑星「リュウグウ」から採取した試料を入れたカプセルを無事に地球へと帰還させた。高度約22万キロから分離されたカプセルは、豪州南部ウーメラ付近の砂漠に到着。米航空宇宙局(NASA)は、リュウグウから採取した試料を調査する準備が進んでいることを伝えている。

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■法医学と似た手法が活用

 はやぶさ2を運用する宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、リュウグウから持ち帰った試料の調査を6つの機関に託す予定だ。そのひとつが、NASAゴダード宇宙飛行センター・宇宙生物学分析研究室のチームである。犯罪の解決に寄与する法医学研究室でも使用されるものに似た、最先端の装置が試料の分析に使われる予定だ。

 リュウグウから採取された試料は、地球がどのように進化したかを理解するのに役立つという。地球など太陽系の惑星は、若い太陽の周りを取り巻く「原始惑星系円盤」から誕生したと考えられている。どのように原始惑星系円盤から地球上の生命が誕生したのか、あるいは別の場所に生命の起源があるかなどが、研究チームが解決すべき課題である。

■コーヒー豆6粒分の試料から有機化合物を抽出

 NASAの研究チームは、2021年に試料を受け取り、有機化合物や炭素化合物を見出そうとする。研究チームが関心をもつ有機化合物にはアミノ酸も含まれる。アミノ酸は数十万のタンパク質を作る分子であり、生命にとって本質的な機能をもつDNAの源でもある。

 こうした化合物がどのように生成され、太陽系へと拡散したかを理解することを目指す。リュウグウから採取された試料は、はやぶさが持ち帰った「イトカワ」のものよりは多いものの、それでもコーヒー豆6粒分に相当する数グラムしかないと見込まれている。そこから有機化合物を抽出するのだ。

 小惑星から試料を地球へと持ち帰ったのは、リュウグウで2例目だ。このほかにも、NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベンヌ」から試料を持ち帰る予定だ。10月20日にオシリス・レックスはベンヌから試料を採取することに成功している。

 研究チームは、リュウグウとベンヌの試料を比較する予定だ。ベンヌの方が過去の水や有機化合物の証拠を多く含む可能性があると、研究チームのメンバーは述べている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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