火星で塩水が存在する可能性高い場所示すマップ 米アーカンソー大学が作成

2020年12月11日 08:53

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研究の様子。(画像: アーカンソー大学の発表資料より (c) Whit Pruitt, University Relations)

研究の様子。(画像: アーカンソー大学の発表資料より (c) Whit Pruitt, University Relations)[写真拡大]

 米アーカンソー大学は10日、火星での塩水の存在形態に関する研究成果の概要を公開した。これによれば、火星で水が塩水として存在できる時間は以前考えられていたよりも短く、1日当たりで最大でも12時間に過ぎず、火星で1日中安定している塩水はどこにもないとの見解が示されている。

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 この研究では、アーカンソー州宇宙惑星科学センターにある火星での環境を模した火星チャンバーで、様々な実験が試みられている。これらの実験を通じて収集された塩水蒸発率に関するデータを、惑星の全球気象循環モデルと組み合わせて、塩水が見つかる可能性が最も高い場所の惑星全体のマップが作成された。

 水ではなく塩水の蒸発率に着目した理由は、純水と比べて塩分が混合した水では、沸点が高く蒸発しにくい性質があり、しかも凝固点が低く凍りにくいためで、火星の厳しい環境下では、水よりも塩水のほうがはるかに存在の可能性が高いと考えられるからだ。

 地球においても海を大量に満たしているのは水ではなく塩水である。しかも地球においては最初の生命体は塩水で満たされた海から出現している事実もあるからだ。

 この研究が過去の類似した研究と異なるのは、液体のすべての主要な相変化(凍結、沸騰、蒸発)を考慮に入れて実験を進めた点にあるという。しかも、これらすべてを考慮に入れないで進められてきた過去の研究では、火星表面での塩水の存在時間を過大評価している可能性が高いのだという。

 研究者らは火星表面における安定した塩水は、中緯度から高北の緯度、および南半球の大きな衝突クレーターに存在する可能性が最も高いと主張する。また赤道近くでは地表に近い地下部分に塩水が存在する可能性が高いとも主張している。

 つまり火星には、地球における海のような常に安定した形で塩水により満たされた場所はなく、1日のうちで暖かい時間帯だけ、液体状態にある塩水で満たされた湖が出現するが、温度が低下していくにつれて、そこは凍ったスケートリンクに変貌していくといったイメージである。

 この研究に関する論文は11月12日付でアメリカのTHE PLANETARY SCIENCE JOURNALに全文が公開され、そこにはかなり詳細なデータも示されているので、興味のある人は参照されたい。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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