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テロメアを簡便リアルタイムに可視化 老化・がん研究に新手法 京大
DNAの両端に存在するテロメア部分に見られる塩基の繰り返し配列に、選択的に結合する化合物を開発し、蛍光化合物を付着させたイメージ図。蛍光マーカーは「SiR-TTet59B」と名付けられ、テロメアの働きを観察することができる。(c) 高宮ミンディ/京都大学アイセムス[写真拡大]
京都大学は2日、生きた細胞のテロメアを簡便にリアルタイムで可視化する新しい手法を開発したと発表した。研究グループは新しく蛍光分子「SiR-TTet59B」を開発することで、この手法を実現した。
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■テロメアと老化・がんの関係
テロメアは染色体の末端にあり、染色体を保護する役割を果たしているが、老化やがんなどの疾患と深く関わっていることが解っている。
テロメアは細胞分裂のたびに短くなっていく。そして、テロメアがある程度短くなると、細胞は以後の分裂を停止する。これが細胞の老化だ。
また、テロメアの機能に異常が生じると、染色体を安定的に維持することができなくなり、がんなどの疾患につながる。
このようにテロメアは老化やがんなどの疾患と深く関係しており、現在、多くの研究者の注目を集めている。
しかしこれまで、生きた細胞のテロメアを可視化するには、テロメアを可視化する細胞のDNAに特殊なDNAを組み込む必要があった。これでは非常に手間がかかってしまう。
■新しく蛍光分子「SiR-TTet59B」を開発
そこで研究グループは、新しく蛍光分子「SiR-TTet59B」を開発した。SiR-TTet59Bは、テロメアを直接可視化する化合物であるために、特殊なDNAを組み込む必要がなく、より簡便で幅広い応用が期待できるという。
SiR-TTet59Bはテロメアに結合すると、蛍光がONになり、近赤外線を当てると、蛍光する。研究グループによると、近赤外線は生体への影響が少なく、生きた細胞の可視化に適しているという。
またSiR-TTet59Bのテロメアを可視化する能力は、これまでの手法と同等以上であると考えられるという。
研究グループでは、すでにこのSiR-TTet59Bを使い、生きたヒトの細胞の細胞分裂時におけるテロメアの動きについて、可視化に成功している。
またヒトのがん細胞において、テロメアの長さが長くなるほど、蛍光シグナルが強くなることも確認している。そのため将来的には、SiR-TTet59Bはテロメアの長さの測定にも応用可能だという。
研究グループでは今後、SiR-TTet59Bがテロメアに関する基礎的な研究や、細胞の老化具合の計測、がんなどの疾患の診断など、幅広い応用が期待できるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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