スギHDに見る、これからのドラッグストアの在り様

2020年12月1日 16:22

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 統合再編に象徴的に、ドラッグストア業界は大きな節目を迎えている。「調剤薬局併設店舗数」「取扱商品アイテム・品数」で競う時代は終わったと言って過言ではない。今後の雌雄を決するのは「治療・介護・地域包括ケア」との関わりの濃度ではないか。

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 その意味で、愛知県(東海エリア)を軸に商圏を拡大している、スギホールディングス(以下、スギHD)に興味を覚える。業界大手の一角。そしてその特徴を一口で言えば、「在宅医療・介護」と積極的に取り組んでいる点。薬剤師約3000名、1225店舗を展開するスギHD傘下のスギ薬局では在宅医療を実施、スギメディカルは看護師90名で訪問看護ステーション13拠点体制を整備している(2020年9月末)。

 斯界のアナリストは「スギHDの強みはそれぞれの拠点を介し訪問調剤や無菌調剤室の設置、訪問看護・居宅介護支援を実施し、地域医療・看護・介護の担い手となっている点だ」と指摘する。

 在宅医療実施店舗ならではの『おもてなし便』と称されるサービスがある。自宅や介護施設等で療養する患者やその家族の「薬剤だけでなく生活用品も届けて欲しい」という声を実現したもの。店舗で扱う約2万アイテムから高齢者ニーズの高い約400アイテムをカタログ化し、約1万1000人の療養患者に月に2回程度訪問する薬剤師が薬と一緒に届けている。

 スギ訪問看護ステーション林寺(大阪市阿倍野区)が、「大阪府から訪問看護ステーションの向上委託を受け、地域医療機関との連携研修や医療介護の在り様の発展に寄与している」といった事由も先のアナリストの指摘を裏付ける証左と言える。

 医食同源。400名を超す管理栄養士を各店舗に配置。食生活や運動などの側面から健康維持のアドバイスをしたり、イベントを開いたりしている。

 同時にこんな展開も手掛けている。愛知県大府市はタニタヘルスリンクが展開する「からだカルテ」を活用し、「体脂肪・筋肉量・歩数・血圧」を測定し健康関心度を高める取り組みを行っている。連携。大府市内の店舗でそうしたデータ送信ができる。送信のために来店する参加者に、管理栄養士が食事・運動の助言を行う。更には独自開発の無料アプリ「スギサポeats」は食事の写真を撮るだけで食事記録が管理でき、管理栄養士・医師・薬剤師にいつでもチャット形式で相談ができるプレミアムサービスも提供している。

 そうしたスギHDが重要課題のひとつとして標榜しているのが「あらゆる人々の安心・安全を支える地域拠点としての発展」。地域包括ケアの深耕。既に13の市町と「包括連携協定」、「保険外サービス協定(2市町)」「防災協定(27市町・2団体)」「見守り協定(9市/いずれも2月末時点)」を締結している。

 ドラッグストアが世に求められる役割も拡がりをみせている。真の競争はこれからが「ヨーイ、ドン」と考える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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