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欧州宇宙機関、月面居住施設「ムーンビレッジ」の評価結果を公開
欧州宇宙機関(ESA)は17日、将来月面での人間の居住を目的とした構造物「ムーンビレッジ」に関して、その評価結果を公表した。ムーンビレッジは、アメリカ最大級の建築設計事務所であるスキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル(以下、SOM)が設計したもので、ESAはその評価を依頼されていた。
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ESAの公開した情報によれば、非常にユニークな発想で考案されたムーンビレッジの全貌が明らかにされており、その評価レポートは実に186ページにも及ぶ。ESAではムーンビレッジの評価に2018年から着手しており、丹念に時間をかけて評価を進めてきたことがうかがい知れる。
このムーンビレッジは、4人の人間が月面で長期間居住するための建物として設計されており、可能な限り高い体積対質量比を提供するセミインフレータブルシェル構造を採用している。セミインフレータブルシェル構造とは、ムーンビレッジを月面に設置するとそれ自体の内部体積が約2倍に膨張するというものである。
ムーンビレッジは、月の南極付近にあるシャクルトンクレーターの縁への設置が想定されている。この場所は、人間が居住するには非常に好条件がそろっている。
2週間周期で昼と夜が繰り返される月面において、極端な気温の低下を避けられる場所であり、ほぼ連続的に日光が当たることで、太陽光発電による常時電力も供給できる。隣接するクレーターには日光の陰になる部分があり、そこには水氷堆積物が存在していることから、水の供給にも困らない。加えて、地球の眺望も常時可能な場所である。
またムーンビレッジは4階建ての構造をなし、そこで300日間快適に暮らすことができるという。月面は、常時磁気によるシールドで保護されている地球の表面とは異なり、常に太陽からの放射線や宇宙のあらゆる方向からやってくる宇宙線の照射に曝される。その被害からどう人体を守ってゆくのかは、非常に重要な技術課題だ。
この目的を達成するため、SOMは人間の居住空間を下層階に設ける選択をした。これによりムーンビレッジのより上層構造が放射線を遮蔽し、放射線被ばくを最小限に食い止めることを可能にしている。
ムーンビレッジは宇宙船の着陸地点から、かなり離れた場所への設置が検討されている。その理由は宇宙船の離着陸により飛散する粉塵被害を避けるためである。ここでは毎日、青い地球を眺めながら湯船にのんびりと浸かるというようなのどかな暮らしがあるのだろうか。こんな光景が現実化するのもたった数年先のことなのである。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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