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水星探査機「みお」が金星スイングバイ JAXAが3機による金星同時観測に成功
金星スイングバイ前後のベピコロンボ、あかつき、ひさきの位置関係(画像:JAXAの発表資料より)[写真拡大]
欧州宇宙機関(ESA)の水星表面探査機「MPO」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による水星磁気探査機「みお」による国際共同ミッション「ベピコロンボ」が進行中だ。JAXAは4日、金星での初のスイングバイ(フライバイ)後も、探査機が軌道上を順調に航行中であることが確認されたと発表した。
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JAXAは4日、10月15日に実施した金星スイングバイ(フライバイ)後の「みお」と「MPO」の軌道を計測した結果、探査機が目標としていた軌道上を順調に航行していることを確認したと発表した。スイングバイ中には金星探査機「あかつき」と惑星分光観測衛星「ひさき」の3機による金星共同観測も実施している。
■初となる金星の3機共同観測
「みお」はJAXAによる探査機プロジェクトで、開発期間は10年以上ともっとも長い。「みお」にはプラズマ・粒子観測装置や磁力計、プラズマ波動・電場観測装置などが搭載され、水星周辺の磁気圏で発生する物理現象を観測する。一方で水星に到達するまでに計9回のスイングバイが実施され、内2回は金星で行われる。
1回目となる金星のスイングバイは10月15日に実施された。金星表面からの高度10,721キロメートルまで最接近し、同時に「あかつき」「ひさき」と共同で金星の観測を実施した。
金星を周回する唯一の人工衛星「あかつき」は、波長の異なる5台のカメラにより、金星の大気の動きを3次元で捉える。これにより物質分布が明かされるという。地球を周回する「ひさき」は世界初となる惑星観測用の宇宙望遠鏡で、太陽風が金星など太陽系惑星に与える影響を調べることで、太陽系初期に発生した現象を理解しようとする。
今回、「みお」のスイングバイ前後で「あかつき」が1~2時間おきに、「ひさき」は前後1週間で観測が実施された。「みお」に搭載された科学観測装置でも太陽風や金星周辺のプラズマ環境の観測が実施され、電子の分布が両者で異なることが判明した。金星周辺のプラズマ環境は未解明なため、今回の観測は貴重なデータを提供するという。3機共同で実施した金星観測のデータ解析は今後進められる予定だ。
■ESAが順調な航行を確認
一方、ベピコロンボに参加する2機の水星探査機が順調に航行していることを確認したのが、ESAだ。スイングバイによる毎秒約3.25キロメートルでの減速は目標とした数値だという。スペイン、アルゼンチン、オーストラリアに位置する深宇宙ネットワーク局によって水星探査機の航行が追跡され、「みお」が正常な状態だと確認された。
金星での2回目のスイングバイは、2021年8月10日頃を予定し、高度約550キロメートルに最接近する際にも科学観測が行われる予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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