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海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい」進水【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
*11:28JST 海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい」進水【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
2020年10月14日、三菱重工業<7011>の神戸造船所で海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい」の命名・進水式が挙行された。「たいげい」は、中期防衛力整備計画(26中期防)に基づく平成29年度(2017年度)計画「3,000トン型潜水艦」として建造され、2022年3月に海上自衛隊へ引き渡される予定だ。艦名の由来は「大きな鯨」である。旧日本海軍潜水母艦「大鯨」の2代目に当たり、「たいげい型潜水艦」の1番艦となる。ここで「たいげい」の特徴などをみてみよう。
海上自衛隊によると潜水艦の艦名は、これまで海洋現象や海洋生物名に由来する名称を付けており、「おやしお型」(9隻)、「みちしお」や「いそしお」、「そうりゅう型」(11隻)の「じんりゅう」、「けんりゅう」などであり、今後は名前に「げい」が付けられるそうだ。「たいげい」は「そうりゅう型」の後継艦で、全長84メートル、全幅9.1メートル、深さ10.4メートル、基準排水量は3,000トンである。「そうりゅう型」よりも50トン多く、やや大型化している。軸出力は6,000馬力、建造費は約800億円、乗組員は70名である。艦内構造を変えることで居住性を向上させており、潜水艦で初めて女性専用区画が設けられた。2021年3月には「そうりゅう型」の最終艦となる「とうりゅう」が就役し、2022年に「たいげい」が加わると、2018年12月の防衛大綱で定められた「潜水艦隊の22隻体制」が整うことになる。
防衛装備庁は、「たいげい」型の兵装や装備に目覚ましい改善や性能の向上が図られる事を公表している。従来の89式魚雷の後継として、最新の18式新型魚雷が搭載される見込みである。18式魚雷は「高速長距離長時間航行可能」で、囮装置をはじめとする魚雷防御手段への対応能力が向上し、深海域のみならず音響環境が複雑な沿海・浅海域でも有効な攻撃が可能な設計になっている。また、船体には高性能新型ソナーを装備している。艦首ソナーは長距離探知と浅海域での使用に最適化され、艦側面の聴音アレイに光ファイバーソナーを採用し「音波ではなく、光の干渉作用を探知できる」と言われている。その他、曳航式ソナーアレイにより長距離かつ全方向の探知及び追尾が可能となる。「たいげい」型潜水艦は、「そうりゅう」型潜水艦の発展形として、X字形潜舵で操縦性と信頼性を増した設計を継承している。艦首に傾斜角が付き司令塔が後方に移動、流体力学効果の向上により、抵抗を減らし、速力と航続距離の増加が見積もられている。さらにGSユアサ<6674>が開発した大容量リチウムイオン蓄電池が搭載されており、長期間に及ぶ潜航巡行性能と低振動の静粛性に優れた世界に誇る最高水準の通常型潜水艦となるだろうと言われている。
潜水艦は、極めて大きな戦略的価値を有する兵器である。第一次、第二次世界大戦の欧州におけるドイツのUボートによる多大な戦果、1962年のキューバ危機の際の米国の海上封鎖におけるソ連潜水艦の撃破、1982年のフォークランド紛争における両国の潜水艦戦など、潜水艦の運用は戦況に大きく影響する。海戦において艦艇による作戦を遂行する際、補給も含めていかに海上交通路を潜水艦の脅威から防御するかが重要である。潜水艦戦は、作戦全体の成否にも関わり、国家の存亡にも大きな影響を及ぼすこともある。我が国周辺では、周辺国による潜水艦の増強、近代化、活発な活動が顕在化している。今後、我が国の潜水艦の開発、運用もさることながら、周辺国の動向も注視していかなければならない。
写真:ロイター/アフロ《RS》
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