いまこそおさらいしたいiDeCoとつみたてNISAの違い 前編

2020年10月11日 07:45

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 過去3回に渡ってNISA口座の基礎を解説してきたが、今回はNISAとは別の税制優遇措置であるiDeCo(イデコ)について紹介したい。特に前回紹介した、つみたてNISAとiDeCoとの違いについては、その目的や内容の違いを十分に理解しておくべきであろう。

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 さて、iDeCoは積み立て式の資産運用である点ではつみたてNISAと同じだが、主に(1)優遇される税金の種類と金額、(2)投資の対象、(3)運用可能な期間、(4)途中解約の可否の4つに大きな違いがある。

 まずは、iDeCoがつみたてNISAよりもさらに長期的な運用を目指しており、老後の年金収入を補う役割に特化していることを認識していただきたい。もちろん、少子高齢化という社会問題を見据えていることは間違いないが、現実的に厚生年金を受給できない自営業者にとっては、わずかな国民年金をそれまでの貯蓄で補わなくてはならない。

 自営業者の中には、あらかじめ個人年金に加入して老後に備える人もいるが、その個人年金を国が主導した上で、大幅な税制優遇を認めたのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)というわけだ。では早速、つみたてNISAとiDeCoの違いを確認していこう。

 まず、(1)優遇される税金の種類と金額についてだが、つみたてNISAはあくまでも運用で得た利益に対しての課税が非課税となるだけだ。一方で、iDeCoは運用益に加え、毎月積み立てる金額(拠出金)が、そのまま全額所得控除の対象となる点で大きく異なる。

 積み立てることができる金額には職種や企業年金の有無により上限があるものの、自営業者であれば月額6.8万円、年額で81.6万円もの所得控除が可能だ。そして、厚生年金を受給できるサラリーマンであっても、月額1.2万円~2.3万円、年額最大27.6万円の所得控除が可能である。

 所得控除とは、年末調整や確定申告の際に、1年間に支払われた給与などの収入からあらかじめ差し引きできる金額で、生命保険控除や配偶者控除、住宅ローン控除などと同列だ。そして、所得税や住民税は控除によって差し引きされた後の金額(実質的な所得)に応じて課税されるため、iDecoで積み立てた金額が多ければ多いほど、大きな節税効果となる。

 たとえば、年収500万円のサラリーマンが、月額2.3万円、年間で27.6万円をiDecoに積み立てしたとしよう。年収500万円から、基礎控除、サラリーマンが対象である給与所得控除、ごく一般的な社会保険料控除をしたのちの所得税額はおおよそ14万円、住民税額はおおよそ24万円で、課税総額は38万円となる。

 ここにiDeCoで積み立てた年間27.6万円全額が所得控除として加えられるため、最終的な所得税額はおおよそ11万円、住民税額はおおよそ21万円で、課税総額は32万円にまで減額されるのだ。つまり、サラリーマンであっても、iDecoに積み立てる、言い換えれば27.6万円をiDeCoとして貯蓄するだけで、毎年約6万円もの節税が可能となるのである。高額な税金を支払うことに辟易としている人にとっては朗報でしかないだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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