塩と水蒸気が取り囲む原始星のペア 連星形成の鍵握る発見 国立天文台など

2020年9月28日 21:08

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アルマ望遠鏡が明らかにした原始星のペアを取り囲むガス円盤の構造。場所により組成が異なる。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tanaka et al.

アルマ望遠鏡が明らかにした原始星のペアを取り囲むガス円盤の構造。場所により組成が異なる。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tanaka et al.[写真拡大]

 2個以上の恒星がペアを組む連星。我々の住む天の川銀河の星の過半数が連星系をなしていることが知られている。こうした連星もまた、塵やガスを取り囲む原始星が進化した姿だ。国立天文台は25日、塩と水蒸気が主成分の円盤が取り囲む原始星のペアを発見したと発表した。2つのガス円盤が互いに逆方向に回転しているという。

【こちらも】連星系の原始惑星系円盤がもつ新しい特徴が明らかに アルマ望遠鏡

■未解明の大質量星の形成メカニズム

 太陽に近い質量をもつ小質量星に対し、太陽の10倍以上もの質量をもつ大質量星が存在する。恒星は宇宙空間中の塵やガスを取り込むことで誕生することが知られているが、大質量星は数が少ないうえに地球から離れた場所に位置する。

 そのため、大質量星が「原始星」と呼ばれる恒星のひな形からどのように形成されるかについてのメカニズムは、十分に解明されていない。原始星周辺を取り巻くガスが複雑な分布をしているため、恒星の材料となるガス円盤を特定しにくいのだという。

 国立天文台、理化学研究所(理研)の研究者らから構成されるグループは、地球から約9,500光年彼方の原始星のペア「IRAS 16547-4247」に注目した。太陽の25倍程度の質量をもつ天体だが、その周辺を太陽の1,000倍もの質量をもつガスが取り囲んでいるという。研究グループは、国立天文台が運営するアルマ望遠鏡でIRAS 16547-4247を取り囲むガス円盤を観測した。

 複数の電波干渉計から構成されるアルマ望遠鏡は、分子から放射される電波を捉えることが可能だ。アルマ望遠鏡により今回、異なる組成をもつガスが、IRAS 16547-4247を取り囲んでいることが判明した。この天体から遠い領域では、従来通り重い原始星から観測されるシアン化メチルや二酸化硫黄の分子ガスが存在していた。その一方で、IRAS 16547-4247に近い領域では、塩化ナトリウムや高温の水蒸気からなる分子ガスが存在していることが判明した。

■異なる由来をもつ原始星がペアを組んだ可能性

 研究グループはまた、IRAS 16547-4247を取り囲むガス円盤の挙動を調べたところ、2つの円盤が逆向きで回転していることが明らかになった。双子の原始星であればガス円盤が同じ方向で回転しているという。研究グループは、異なる場所で形成された原始星が出会ってペアを組んだ可能性があると推察している。

 研究グループは今後、観測を続けることで重い原始星から大質量星が誕生するメカニズムが解明されるだろうとしている。

 研究の詳細は、米天体物理学誌Astrophysical Journal Lettersにて8月25日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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