中国語の多読に最適! ノーベル賞作家『莫言』の脳波が躍動する3つの作品

2020年9月17日 06:39

印刷

 前回は外国語学習で多読をすると、下記の5つの効果が得られるということについて詳しく紹介した。

【こちらも】多読は外国語習得に効果絶大! 多読で得られる5つのメリット

 ・ワクワク効果で記憶力が高まる。
 ・未知語推測訓練ができる
 ・動詞が習得できる
 ・文法(統括構文)が習得できる
 ・語彙力がアップする

 多読は外国語学習初期において、ウエルニッケ感覚性言語野に神経回路網を形成するために効果的である。そして、それ以上に、中・上級の学習者が未知語推測訓練をしたり、統括構文を習得したりするのに絶大な効果があるのだ。

 多読は、自分が読みたい本を楽しく読むことがポイントだ。好奇心や興味関心を持って楽しい気分で読書をすると、シータ波が躍動する。シータ波が海馬に伝わると、記憶形成を担う「海馬新生ニューロン」の分化が促進されるため、記憶力が飛躍的にアップするのだ。

 以前、中国語学習のために、ワクワクする読書に最適な作品として、ノーベル賞受賞作家「莫言」の作品《白檀の刑》を紹介した。

【参考】中国語力を飛躍的にアップする、ノーベル賞作家・莫言の作品「白檀の刑」

 今回は、同じく莫言の執筆による、下記の3つの作品を紹介したい。どれも「白檀の刑」に負けず劣らずセンセーショナルな作品だ。

●オススメ度NO1《蛙》(蛙鳴:あめい)

 ストーリー: 1人っ子政策の実態を浮き彫りにした作品。

 シータ波躍動ポイント: 中国農村部の人々は、「家を絶やさないためにも男子を生まなければならない!」といった、伝統的な考え方に支配されている。同作品では、「政府の政策に歯向かっても男子を産みたい!」と必死に抵抗する人々と、「第2子を産ませまい!」と無情に堕胎を迫る女性産婦人科医の凄まじい格闘が描かれている。

 本のタイトルの蛙は日本と同じで「かえる」を指すが、中国語の蛙の発音はWaで赤ん坊や人形を意味する「娃」と同音である。1人っ子政策で葬られる胎児の叫びを示唆するタイトルなのである。当該作品の第3部7段落目の格闘はとくに強烈で、トラウマ並に記憶に残る内容となっている。

●オススメ度NO2《酒国》(酒国―特捜検事丁鈎児の冒険)

 ストーリー: 大富豪の金が支配する酒国市では、金が美食の極みとして嬰児を食材にしたグルメ料理を堪能している。こんなとんでもない情報を入手した中央政府は調査のため特捜検事の丁鈎児を酒国市に潜入させた。酒池肉林の接待に骨抜きにされた丁は、「ミイラ取りがミイラ」となって、酒と肉におぼれていく。

 シータ波躍動ポイント: 胎児を食材にしたグルメの描写がエグいが巧妙で素晴らしい。汚職、グルメ、性欲、健康への執着など人間の貪欲さ、残酷さ、えげつなさをくっきりと浮き彫りにする卓越した描写力。

●オススメ度NO3《紅高粱》(紅い高粱:コーリャン)

 張芸謀(チャン・イーモウ)によって映画化され、1988年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した作品。ロバ1頭と引き替えに、親子ほど年の離れたハンセン病患者に売られるようにして嫁いだ女性を、鞏俐(コン・リー)が演じて大好評を博した。

 シータ波躍動ポイント: 物語の中盤で抗日戦争が勃発。山積みの死体、犬やロバへのリンチ、そして人間へのリンチなど暴力が日常化する中で、人間がさらけ出すたくましさとしぶとさ。

 莫言の作品ならば、楽しいだけではなく、卓越した文章力や語彙力、構成力で、中国語がさらに磨かれる。また、中国の社会問題や伝統的思想を知ることができて興味深い。

 中国語書籍が安く買えるサイトは下記の記事の中で紹介しているので参考にしてほしい。

中国語の語彙力を飛躍的に伸ばす方法 村上春樹や東野圭吾の中国語版を多読(記事:薄井由・記事一覧を見る

関連記事