大学発ベンチャー企業の近況

2020年9月9日 17:54

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エルピクセルが開発した医用画像解析ソフトウェア「EIRL Chest Nodule」による画像。(画像: エルピクセルの発表資料より)

エルピクセルが開発した医用画像解析ソフトウェア「EIRL Chest Nodule」による画像。(画像: エルピクセルの発表資料より)[写真拡大]

 大学発ベンチャー企業が「着実に実績を残しているな」を、改めて実感できる事象を知った。

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 例えば東大発のエルピクセルは、AIベンチャー(開発・適用)として世に登場してきた。そんな同社が「胸部X線画像診断AIを開発」、と発信した。X線やMRIの画像から疾患の兆候を見抜くのは、医師の高い技量・経験・集中力が必要とされる。放射線診断・放射線治療の専門医は現在、約6万1000人にとどまる。不足。ゆえに今回のような「AI」が必要になってくるのであろう。

 そうした現状下でエルピクセルが開発したAIソフトは、肺のX線画像から「肺結節」と呼ばれる「肺がん」「肺炎」「肺結核」が疑われる微小な画像でも見落とさないという。画像データをパソコンやタブレット端末で確認でき、かつ画像の拡大も可能。厚労省の承認を得て、8月28日に販売を開始した。

 また、筑波大学発のロボットベンチャーにサイバーダインがある。医療・福祉施設の職場などで活用される、サイボーグ型ロボット:HAL/ロボットスーツでデビュー。設立から10年目の2014年に東証M市場に上場を果たしている。そんなサイバーダインの手で開発された清掃用ロボット:CL02が、発祥のお膝元の地であるつくば市に納入された。自治体としては初の導入だという。どんなロボットか。

 「自律走行で掃除が可能。建物内部の形状と清掃経路を認識・記憶するために、磁気テープやマークといった誘導線がなくてもOK。内蔵している3Dカメラが障害物を検知すれば一度止まる。確認の上、進む・迂回するかが自動的に選択される。作業結果を可視化する機能も搭載されている」。

 が、この限りでは、ロボット時代のいま、同様水準の機能を有した清掃ロボットも少なくない。しかしサイバーダインの生みの親である山海嘉之社長は、そんな指摘に対しこう切り返している。「羽田空港や成田空港、大手デベロッパーが展開する商業施設などに導入されている」と。

 また、こうも語っている。

 「CL02に、うちが開発した環境センサーを取り付けることで、例えばビル内の温度・湿度の分布や環境データを収集することが可能」

 「CL02は清掃だけでなく消毒機能も搭載されている。頂上部に噴射器を搭載。底面には紫外線の照射装置がついている。紫外線は当たりすぎると人間の健康をそこないかねない。だがウイルスが多くいる底面に、つまりウイルスに一番近いところで照射でき低パワーで大きな効果が望める。液体噴射、紫外線照射で消毒・除菌が可能」等々。

 言い換えればCL02は、コロナウイルス感染拡大に対応する役割も期待できる。大学発ベンチャーは健在のようである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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