白色矮星の超高密度を世界で初めて実験室で再現 米国の研究所

2020年8月26日 07:39

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 太陽の数分の1から数倍以内の質量を持つ恒星は、その生涯の終末期において白色矮星となることが知られている。これらの恒星は白色矮星の姿になるまで、様々なドラマを経験する。

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 太陽も同じ運命をたどることになるのだが、現在の太陽は水素の核融合反応が安定的に持続しており、温度も明るさも比較的安定した状態を保っている。だが、この核融合反応が進み、中心核がヘリウムに専有されるようになると温度が激しく上昇して赤色巨星となる。太陽がこのようになるのはまだ何十億年も先のことだと考えられているが、そのころ地球は巨星化した太陽に飲み込まれる運命にある。

 さて今日取り上げる白色矮星とは、この赤色巨星の外側を取り巻く水素がやがて拡散して惑星状星雲となり、宇宙空間に飛散した後に残る残骸のことだ。白色矮星は元々明るく輝いていた恒星が、水素ガスを放散しつくして中心核だけが残された存在で、非常に高密度の星であることが知られている。太陽もやがて赤色巨星化し、地球を飲み込む形で人類を含むあらゆる生命体を滅ぼし、惑星状星雲を誕生させたのち、残骸となった中心核が超高密度の白色矮星になるのだ。

 今回実験室で超高密度を再現したのは、太陽系50億年の歴史の中で初めてという画期的な出来事である。この研究論文が公表されたのはイギリスの科学論文誌Nature上で、これによれば白色矮星の密度はスプーン1杯の体積が自動車1台分の重量に相当するという。

 実験はホールラウムチャンバーと呼ばれる装置内で実施され、炭化水素化合物にレーザー照射によって4億5000万気圧の超高圧をかけることに成功している。この状態でチャンバー内の炭化水素温度は350万度にまで達し、秒速200kmの衝撃波がチャンバーの中心に向かって発生するという。

 この実験により白色矮星で生じると考えられる物質が存続できる時間はごくわずかであるが、その際の炭化水素化合物内での電子の挙動を観察するには、十分な時間であるという。

 地球上に存在する原子では、電子は原子核の遥か上空を周回しており、俗っぽい表現をすればスカスカ状態だが、白色矮星では電子は原子核のごく近傍にあり、まるで満員電車ですし詰めのような状態になっているはずである。近い将来、その状態方程式がこの研究によって明らかにされるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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