極高エネルギー宇宙線の発生源に迫る発見 「大角度異方性」を確認 京大ら

2020年7月31日 19:26

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赤道座標に表示された極高エネルギー宇宙線の量。大角度異方性を示す。(画像:京都大学の発表資料より)

赤道座標に表示された極高エネルギー宇宙線の量。大角度異方性を示す。(画像:京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 宇宙には10の18乗電子ボルト以上の「極高エネルギー宇宙線」を持つ粒子が存在し、その起源は宇宙物理学における謎のひとつである。京都大学は28日、米ユタ州にある宇宙線検出器により、極高エネルギー宇宙線が到来する方向を調べた結果、銀河系の外に宇宙線の発生源が存在することを突き止めたと発表した。

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■発生源が謎の極高エネルギー宇宙線

 極高エネルギー宇宙線は、宇宙で最大のエネルギーを持つ粒子だ。発生源としてガンマ線バーストや活動銀河核、非常に強い磁場を持つ星などが予想されているが、特定はされていない。

 こうした極高エネルギー宇宙線の発生源を特定するために、米ユタ州にある宇宙線検出器により、定常観測が実施されている。砂漠地帯に粒子検出器が507台設置され、700平方キロメートルの範囲で極高エネルギー宇宙線の到来を探しているという。

 京都大学の研究者も参加する国際共同研究グループは、11年間も「大角度異方性」と呼ばれる現象の探索を続けた。宇宙線は、電荷を持つことから磁場によって曲げられるため、一様等方に地球に到来する。一方で宇宙線は、エネルギーが高いほど磁場による曲がりが小さくなるため、45度以上の大角度で到来する量には違いが出ることが予想されるという。

 研究グループは、観測した極高エネルギー宇宙線を解析した結果、8.8×10の18乗電子ボルト以上のエネルギーを持つ宇宙線が、大角度異方性を示すことが確認された。赤道座標において赤経131度の方向から宇宙線が3.3%多く到来していることが判明。これは、発生源が銀河系の外にあることを示唆するという。

■南半球での報告結果とも一致

 極高エネルギー宇宙線は、南半球でも探索が続けられている。アルゼンチンのピエールオージェ観測所は2017年、8×10の18乗電子ボルト以上の宇宙線が大角度異方性を示したことを確認。北半球で行われた今回の測定結果は、このピエールオージェ観測所の報告に一致するという。

 極高エネルギー宇宙線の大角度異方性の決定的な証拠を示すためには、さらなる観測が必要だ。今後も宇宙線の観測を継続し、極高エネルギー宇宙線の発生源の理解が深まることが期待されるとしている。

 研究の詳細は、米天文学誌Astrophysical Journal Lettersにて27日にオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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