賃上げ実施率6割切る コロナ長期化で来春も厳しい状況

2020年7月29日 08:49

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記事提供元:エコノミックニュース

東京商工リサーチ、2020年度「賃上げに関するアンケート」調査

東京商工リサーチ、2020年度「賃上げに関するアンケート」調査[写真拡大]

 近年、人手不足の深刻化や官製春闘とも呼ばれる政府からの賃上げ要求に応えて8割以上の企業が賃上げを実施していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、外出自粛や緊急事態宣言に伴う休業要請などによって収益が悪化する企業も増大しており賃上げを行う企業は8割を割り6割台にまで減少してきているようだ。さらに、新型コロナ終息の目途は立っておらず、来春の賃上げにも影響を及ぼしそうな様相になっている。

 20日、東京商工リサーチが1万3870社をサンプルに6月下旬から7月上旬にかけて実施した「2020年度、賃上げに関するアンケート調査」の結果を発表している。レポートによれば、20年度に賃上げを実施した企業は57.5%と約6割で前年度を23.4ポイントも下回り、2016年度以降、最大の下げ幅となっている。規模別に見ると、大企業での実施率が65.9%に対し中小企業は55.9%と企業規模によって10ポイントの格差がついている。

 産業別には、製造業が62.8%で最も多く、次いで卸売業60.8%、建設業が59.9%、運輸業56.4%、情報通信業56.3%と続いている。最低は金融・保険業の29.4%でリストラや再編の中、厳しい収益構造にあるようだ。大企業と中小企業に分けて見ると、大企業は農・林・漁・鉱業、建設業、製造業での「実施率」が70%を超えているのに対して中小企業では70%を超えた産業は存在しない。製造業においては、大企業が73.4%であるのに対し、中小企業では60.3%と13.1ポイントもの開きがある。

 「賃上げをした」と回答した企業にその内容を聞いたところ、「定期昇給」が84.8%で最も多く、次いで「ベースアップ」の30.8%、「賞与(一時金)の増額」23.5%、「新卒者の初任給の増額」8.2%などとなっており、ベースアップは3割のみとなっている。「賃上げ率はどの程度か」年収換算ベースで聞いた結果では、最多は「2%以上3%未満」の26.7%で、次いで「1%以上2%未満」の23.6%となっており、「賃上げ率3%未満」は57.7%と6割近くとなっている。

 レポートでは「経済活動の一段の停滞は、冬の賞与(一時金)だけでなく、来春の賃上げにも影響を及ぼしかねない。新型コロナ感染拡大は、社会や企業活動だけでなく、国民生活にもジリジリと影響を広げている」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)

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