京大など、スーパーフレアを検出 最大級の太陽フレアの20倍程度

2020年7月15日 17:26

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しし座AD星で発生するスーパーフレアの想像図 (c) 国立天文台

しし座AD星で発生するスーパーフレアの想像図 (c) 国立天文台[写真拡大]

 京都大学は10日、活動的な星であるしし座AD星から、最大級の太陽フレアの20倍程度となるスーパーフレアの検出に成功したと発表した。観測には2019年春に運用を開始した3.8メートル望遠鏡「せいめい」などが用いられた。

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■地球環境に甚大な被害をもたらすフレア

 フレアは、恒星の表面で発生する爆発だ。太陽表面でフレアが発生すると、通信障害等の甚大な被害を地球に及ぼす。観測史上最大級の太陽フレアの場合、1~2兆ドルの被害が生じると予想される。

 とくに「スーパーフレア」と呼ばれる、最大級の太陽フレアのさらに10倍程度となるフレアが、恒星表面で起こりうる。太陽でも数百年に1度、スーパーフレアが発生する可能性がある。そのため、他の恒星でのスーパーフレアを観測し、その性質を解明することで、地球等の惑星での影響が評価可能になるという。

 こうしたスーパーフレアを解明するためには、恒星の分光観測が必要だ。だがスーパーフレアの発生頻度は低いために予測は困難で、観測例は世界レベルでも乏しいという。

■太陽フレアとメカニズムは同じ

 京都大学、国立天文台などの研究者から構成されるグループは、2019年春に運用を開始した京都大学せいめい望遠鏡を用い、スーパーフレアの分光観測を実施した。せいめい望遠鏡は国内最大の光赤外線望遠鏡で、発生頻度の低いスーパーフレアでも観測可能だという。

 研究グループが観測のターゲットに選んだのが、しし座AD星だ。この天体は低温であるため、スーパーフレアが頻発していることが知られている。そこで、8夜強にわたってしし座AD星の観測を実施した結果、12ものフレアを確認。そのうち1つは、最大級の太陽フレアの20倍程度のスーパーフレアであることが判明した。

 研究グループによると、検出されたスーパーフレアの発生メカニズムは、太陽フレアと同様だという。このことから、スーパーフレアが惑星に及ぼす影響については、太陽フレアの観測等によってえられた知見に基づき評価が可能になるとしている。

 研究グループは今後も、さまざまな恒星でフレアの観測や解析を続ける予定だ。スーパーフレアが放出する荷電粒子の量や速度を明らかにすることで、より一般的な議論が可能になるだろうとしている。

 研究の詳細は、日本天文学会欧文研究報告にて10日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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