銀河形成理論の再考迫る宇宙初期の円盤銀河を発見 アルマ望遠鏡

2020年5月27日 08:36

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アルマ望遠鏡で観測されたDLA0817g。現在の銀河のように秩序だっている。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Neeleman; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello

アルマ望遠鏡で観測されたDLA0817g。現在の銀河のように秩序だっている。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Neeleman; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello[写真拡大]

 アルマ望遠鏡を運営する国立天文台は21日、初期の宇宙で大質量の回転円盤銀河を発見したと発表した。従来の銀河形成理論の再考を迫る重要な成果だという。

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■従来の銀河形成のシナリオ

 銀河形成の理論は、「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」と呼ばれる黒体放射などの情報から形成される。宇宙が誕生して約37万年後に、「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる、靄がかかった状態から光が直進可能な状態へと変化した。この時期に放射されたCMBは初期宇宙の情報を含んでいる。

 従来の銀河形成の理論によると、小さな銀河が合体することで大きな銀河が形成されたという。事実、125億年彼方の遠方宇宙からは、直径4,000光年程の小さな銀河が多数発見されている。

■現在のような銀河を初期宇宙で発見

 アルマ望遠鏡により今回発見されたのが、「DLA0817g」と呼ばれる回転円盤銀河だ。これまで発見された回転円盤銀河のうちもっとも遠方の銀河であり、天の川銀河とほぼ変わらない秒速272キロメートルで回転していることが判明した。

 DLA0817gの発見は、従来の銀河形成の研究に異議を唱えるものだ。初期宇宙で発見される銀河のほとんどは激しい衝突を引き起こしている段階にあるため、無秩序な状態にある。だがDLA0817gは、現在の銀河のように秩序だって回転する円盤状にある。ビッグバン後60億年後に存在すると考えられてきた円盤銀河が、宇宙年齢の約1割である15億年後に存在することが判明した。

 独マックスプランク研究所などの研究者らから構成されるグループは、DLA0817gをハッブル宇宙望遠鏡やアルマ望遠鏡など複数の望遠鏡で観測した。その結果、星の形成率が天の川銀河の10倍以上であり、初期宇宙でもっとも星を生産する円盤銀河のひとつだと判明した。このような回転円盤銀河が初期宇宙にはたくさん存在するという。

 研究の詳細は、英科学誌Natureに20日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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