超巨星ベテルギウスは星の合体により誕生した? ルイジアナ州立大の研究

2020年5月20日 07:49

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オリオン座。

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 オリオン座のベテルギウスは2020年のはじめごろには大幅な減光により、超新星爆発が近いかもしれないと天文マニアの注目を集めていた。しかしながら、すでに増光の兆しが見られ、超新星爆発への期待は空振りに終わったようである。だが一方でごく最近、この星に関する興味深い研究論文が発表された。その論文では、ベテルギウスは元々は連星系を構成しており、それらの連星が何らかのきっかけで合体してできた可能性を主張している。

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 恒星と言えばいつも同じ場所にいると思われがちだが、実はそれは誤解にすぎない。どんな恒星もみなある速度を持って移動している。もしも、恒星が速度をゼロにすれば、たちまちあらゆる他の天体の重力につかまってしまうからだ。ベテルギウスも秒速30kmという猛烈な速度で宇宙空間を移動している。この移動速度があるおかげで他の天体の重力に捕捉されずに済んでいる。

 元々ベテルギウスは、オリオンOB1と呼ばれる恒星集団の中にいたのだが、数百万年前にこの集団を何らかの原因で脱走したらしい。脱走した時には連星系を構成していたが、この連星系が時間の経過とともに何らかの原因で合体したのではないかと、ルイジアナ州立大学の研究者たちは主張している。

 彼らがそのような考えに至った理由は、ベテルギウスの自転速度が異常に速いからである。太陽の自転速度は秒速2km程であるが、ベテルギウスは秒速5.5kmもある。物理学の一般的な法則として、回転する球体がその半径を大きくすると回転速度は遅くなる。これは角運動量保存則に従った物体の挙動で、宇宙のどこにおいてもこの性質は保たれている。

 ところがベテルギウスは、太陽の半径の約1000倍にも及び、太陽の自転速度の2倍以上を保っている。このことは、太陽とは全く異なるプロセスで誕生し、太陽とは桁違いの角運動量を持っていたことを意味する。

 ベテルギウスが、太陽とは比較にならないほどの桁違いの角運動量を得た事実に関する彼らが導き出したシナリオは、まず今から数百万年前に、太陽質量の16番の質量を持つ主星と、太陽の2~3倍の質量を持った伴星で構成される連星系がオリオンOB1から脱走。その後時間の経過に連れて、主星が赤色巨星に変化し、太陽の200~300倍の直径に巨大化した結果、伴星がそれに飲み込まれたというものだ。

 このシナリオに基づくコンピュータシミュレーションを実施した結果、ベテルギウスの桁違いの角運動量を再現できたのだという。

 宇宙に存在する超巨星の約6割は、元々は連星系を構成しており、先に示したプロセスで合体をしてきたらしく、ベテルギウスで起きた現象は宇宙ではごく一般的なものであるという。私たちの故郷である地球も約50億年後には太陽が巨星化し、飲み込まれる運命にある。それを思うと我々人類は実にはかない存在なのだと痛感せざるを得ない。 (記事:cedar3・記事一覧を見る

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