マニュアルは変更が必須 トヨタの元設計士がスープラ、86の品質に疑問 (2)

2020年5月15日 07:16

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 スープラをBMWと共同開発した時、トヨタがノウハウとして受け取ったのは、「レーシング仕様」を先に造り、後から市販車を造り上げる開発ステップからの違いだった。

【前回は】マニュアルは変更が必須 トヨタの元設計士がスープラ、86の品質に疑問 (1)

 BMW各車は、操縦安定性が高性能で、プレミアムブランドとしての立場を固めてきた事実がある。そこで、スポーツカーを開発する時、トヨタ社内の規定に従って、例えばスープラのサイドシルの幅半分にこだわってしまうと、プラットフォームの強度不足によりサスペンションのセッティングが定まらなくなる危険が出てくる。だから、これをBMWの基準でプラットフォームを作るべきと、豊田章男社長の決断があったのは想像に難くない。これこそが、BMWの高性能のノウハウをトヨタが学んだ具体的技術であったのだろう。

 そこで問題になるのが、『トヨタ市販車の設計基準を、BMWのスポーツカーの基準にするべきか』の判断についてだ。もし、このBMWのノウハウを「過去のトヨタのノウハウと違う」として拒絶してしまったのなら、トヨタの進歩もない。BMWとの共同開発も無意味となってしまう。

 しかし、「市販車にBMWスポーツカーの基準を全て取り入れられるのか」の検討が必要だ。そして何よりも必要なのは、新しい技術を受け入れ、それをマニュアル化し運用していくという、変化に強い制度をトヨタ社内に構築していくことだ。これは、「更新」出来るルール作りであり、企業内システムの硬直化を防ぐには絶対的に必要なのだ。

 民間企業で組織が硬直した場合、企業は消滅する。組織作りと組織運用においては、最も注意が必要な部分であり、どの様な組織にあっても「システムの硬直化を防ぐ」ことは永遠のテーマだ。

 製造業においては、「設計基準の更新手続き」を正確に素早くできるシステム作りが必要だ。「お役所仕事」になって変更出来ないのでは、新しいノウハウを受け入れられなくなる。かといって、「ルール」を守れないで品質保証問題を起こしてしまっては社会的責任を果たせず、最悪メーカー自体が消滅してしまう。トヨタと言えども「組織としての勝負どころ」と言えよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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