不動産による資産形成は、「投資ではなく事業」である

2020年5月12日 16:24

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 私は2018年11月13日号から財経新聞のマーケット欄で5回にわたり、「株式投資は博打などではない」を連載する機会を得た。日本短波放送入社以来、半世紀余に見聞きした多々の株式投資の「成功例」「失敗例」から、自分なりに至った「あるべき論」を展開したつもりだ。

【こちらも】株式投資は博打などではない (1)

 その意味で最近、興味深い1冊に出会った。「生涯現役で稼ぐ」をサブタイトルにした『「サラリーマン家主」入門』と題するプレジデント社刊の書籍である。正直言うと、書店で表紙に飾られていた著者(永井ゆかり氏)の写真に惹かれて手に取った(我が娘と同年代に思えたゆえである)。

 読んだ。物凄い数の「成功例」「失敗例」を裏付けとした、永井氏の「あるべき論」がそこには書き込まれていた。とりわけ私は240Pから241P目の、こんな記述に目を奪われた。

 『本書では一貫して、不動産による資産形成について、「投資」ではなく「事業」だと伝えてきた。だが大半の人が「年金代わり」、あるいは不動産会社の営業マンの典型的なセールストーク「所得税の減税になる」という位置付けで始めるため、勘違いしてしまうのだ。

 その典型が区分マンション投資だろう。区分マンション投資は、1000万円前後から2000万円程度で購入できるものが多く融資も受けやすい。

 自己資金ゼロで始めると、入居者がいる状況でも家賃だけでは返済がまかなえず、自身の預金から補填が必要なケースが目立つ。物件にもよるが、その額は月々5000~1万円程度、その補填額こそ「年金の保険料だと思ってください」と営業マンから説明を受け、ローン完済後には家賃収入はすべて自分のものになり、月々の5000~1万円程度で35年後には1000万円以上の不動産が手に入ると思ってしまうわけだ。

 しかし、冷静に考えてみてほしい。まず、入居者がいる場合でも自己資金を継続してつぎ込まなくてはいけないのに、空室期間中はどうなるのか。都内で家賃7万~8万円台の物件を買ったとすると、その家賃をさらに自己負担しなくてはいけない。

 しかも、区分マンション販売会社が提示する表面利回りは、たいてい家賃の減額が加味されていないので、ローンが35年で組めたとしても、その間どれだけ家賃が下がるのだろうか。基本的に不動産は築年数が古くなると家賃は下がるが、月々の返済額は減ることはない。それどころか、減価償却費が減り、元金の割合が増えれば、税額は増えるのだ。

 表面利回りには原状回復費用も含まれていない。第9条の「民法改正」のところでも説明したように、入居者による破損や故障以外の原状回復費用は家主の負担となる。原状回復費用は、通常家賃の1~3カ月分程度かかる』(原文まま)。

 著者の履歴欄で月刊誌「家主と地主」編集長と知った。サラリーマン家主を視野に入れている読者には、「では、どうすれば成功するのか、事業主になれるのか」を知るために是非手にしてほしい1冊である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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