天王星の衛星形成についての謎を解明へ 京大が理論モデル構築

2020年4月9日 11:58

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天王星とそのリング(c) Lawrence Sromovsky、University of Wisconsin-Madison/W.W. Keck Observatory/NASA

天王星とそのリング(c) Lawrence Sromovsky、University of Wisconsin-Madison/W.W. Keck Observatory/NASA[写真拡大]

 天王星の傾いた軌道やその衛星の分布はこれまで全く説明がつかず、起源が大きな謎とされてきた。京都大学の研究グループは8日、その謎の解明に向けて天王星の衛星形成モデルを作成することに成功したと発表した。今回の理論モデルは、これまで議論されてきた地球型惑星や木製型惑星の衛星形成とは全く異なる新しいものである。

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 天王星は自転軸が98度傾いた横倒しの状態で自転しているという点で、特異な惑星である。さらに、天王星の5つの衛星も同様にほぼ横倒しの状態で天王星の周りを回っている。これらの特徴から、天王星に他の惑星が衝突して自転軸が傾き、その破片が再集積して衛星になったとする巨大衝突説が唱えられてきた。

 また、天王星はその質量の1割ほどの水素・ヘリウムガスを纏っていることから、他の衛星形成モデルも提唱されてきた。水素・ヘリウムガスを取り込むときに一時的に形成されたガス円盤の中で氷が凝集し、衛星となったとする円盤説も唱えられている。

 しかし、いずれの衛星形成モデルも完璧とは言えず、天王星の衛星がどのようにできたかは大きな謎とされてきた。

 そこで研究チームは、天王星への衛星衝突時に起こる氷の大蒸発に注目した。衝突で固体の破片でなく、蒸発した水蒸気が円盤となり凝縮することを見出したのである。このことによって、従来の巨大衝突説で計算されていたよりも衛星軌道の半径が大きいことが説明できるようになった。また、円盤説では説明がつかなかった自転軸の傾きもこのモデルであれば理由が明らかとなる。

 研究グループが発表したモデルは、地球型惑星のように衛星衝突で固体の破片が再凝縮する形成の仕方とは異なるものである。また、木星型惑星のようにガスの取り込み時に氷が凝集する場合とも違うものだ。本モデルは天王星だけでなく、海王星や太陽系外の氷を主成分とする惑星に一般的に適用できる標準モデルとなり得る可能性を秘めている。

 今回の研究成果は3月30日付のNature Astronomy誌のオンライン版にて掲載されている。

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