アポロ13号50周年「成功した失敗」 NASA

2020年4月8日 11:44

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地上から懸命に指示を送るNASAのフライトコントローラーの面々 (c) NASA

地上から懸命に指示を送るNASAのフライトコントローラーの面々 (c) NASA[写真拡大]

 2020年4月11日は、アポロ13号打ち上げ50周年となる記念日だ。半世紀も昔の出来事のため、アポロ13号の“成功”は風化し、人々の記憶からは忘れ去られているのかもしれない。この記事で、アポロ13号が残した実績を敢えて“成功”と表現したのは、筆者個人の独断からではない。

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 アポロ13号は月面に到達していないし、それどころか月面到達途上で爆発事故を起こし、乗組員の生死にかかわる緊張の時間の連続をもたらした。当時、その動静を伝えるニュースに注目しない人はいなかった。

 こんな失敗事例だが、専門家の間では「成功した失敗」とむしろ称賛されていることを、読者の皆さんはご存知だろうか。

 アポロ13号のミッションは、宇宙での前代未聞の大爆発事故に遭遇し、計画の大転換を余儀なくされた。月に行くことではなく、3人の乗組員を無事地球に帰還させることが、最大の目標となったのだ。結果から言えば、この大事故にもかかわらず、乗組員は全員無事に地球への帰還を成し遂げている。

 つまり、月面に到達こそできなかったが、乗組員たちにとっては絶望的な出来事である爆発事故に遭遇したにもかかわらず、成功確率が1億分の1よりも低いかもしれないと誰もが予測していた「乗組員全員無事帰還」という一大ミッションを成功に導いたことが、月に行くよりも難しいことを成し遂げたのだと称賛されているからだ。

 打ち上げから2日後の4月13日、地球から32万1,860kmの宇宙空間でアポロ13号の酸素タンクが爆発し、悲劇は始まった。それから無事太平洋上に着水を遂げた4月17日午後1時7分までの5日と22時間54分もの間、アポロ13号とNASAとの間では緊張の連続であった。

 酸素タンクの爆発は、機体の爆発損傷だけでなく、乗組員への酸素供給や、地球帰還の際の大気圏突入時のために必要な酸素の供給源が絶たれる危険性をはらむ、これ以上ないというほどの危機的状況をもたらした。爆発のダメージにより船内で機能する装置や供給できる電力も限られており、この状況下で何を使ってどのタイミングでどんなアクションを起こせば、乗組員が無事帰還できるか地上のNASAのエンジニアたちが懸命に考え、乗組員たちに指示を与え続けたのだ。

 記念すべき50周年を祝う式典は、コロナウイルスの影響で残念ながら執り行われないが、NASA TVでは、4月10日にアポロ13号の当時の映像やインタビューの動画配信を行うと発表している。

 アポロ13号は映画でも取り上げられているため、この記事で興味を持ったのならば、是非とも映画でこの「成功した失敗」を追体験されてみてはいかがだろうか。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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