NASAの火星ヘリコプター、7月の打ち上げに向けてスタンバイ

2020年4月2日 12:27

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フロリダ州のケネディ宇宙センターでのテスト中のNASAの火星ヘリコプター (c) NASA / Cory Huston

フロリダ州のケネディ宇宙センターでのテスト中のNASAの火星ヘリコプター (c) NASA / Cory Huston[写真拡大]

 NASAは次の火星探査ミッション「MARS2020」において、地球以外の惑星では人類史上初となる航空機の運用となるヘリコプターを開発し、現在は7月の打ち上げに備えて、最終テスト段階に入っている。

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 NASAでは、現在新型コロナウィルスの影響を受け、ミッション遂行準備日程にも少なからず支障を来たしかねない状況にあるが、現在のところ7月打ち上げの予定に変更は出ておらず、通常の状況と比べると、時間的な制約が非常に大きい状況でのテストとなっている。

 打ち上げ時期の変更が難しいのは、あらかじめ複数の火星への航行軌道候補の中から、最適な軌道計画を選び出し、打ち上げ時期を決定しているためである。

 もしも打ち上げ時期が変更になった場合、軌道計画そのものの全面的な見直しが必要になるばかりか、場合によっては必要となる航行機材の設計見直しに迫られるケースもありうる。

 月のような地球から近い天体であれば、軌道計画の見直しはそれほど大変な作業にはならないが、火星探査ともなれば航行時間も月面探査の比ではなく、少しの計画の狂いでもミッション全体を考えると取り返しのつかない事態に発展しかねない。

 MARS2020は、7月の打ち上げからおよそ7カ月後の2021年2月19日に火星に着陸する予定で、パーサバイアランスと名付けられた火星探査車に加えて、人類史上初となる火星ヘリコプターを用いた探査活動が計画されている。

 ヘリコプターは現在、ローターの回転テストや搭載質量チェックなどの準備の最終段階にあるが、地球上を飛ぶこととは違い、マイナス100℃でも機能するバッテリーや駆動系が要求される。ヘリコプターと聞くと大きな機材を思い浮かべがちだが、今回のミッションで採用されるのはいわゆるドローンそのもので、重さは1.8kgにすぎない。

 また火星の大気は地球と比べて希薄なため(密度は地球上の大気の1%しかない)、そのような環境下で浮上させるため、ローターの回転送度を通常のヘリコプターの10倍程度とした二重反転ローターを搭載している。このため火星の過酷な環境下でローターの回転速度をいかに維持できるかが、成功のカギを握る。

 MARS2020では従来の探査車による撮影、観測だけでなく、上空からの空撮が可能になり、探査範囲の自由度が大きく拡大する。地球上ではドローンを一般大衆が自由に操り、空撮を楽しめる時代になっているが、火星にもいよいよ空撮の時代が到来するかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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