トヨタ春闘「ベアゼロ」で見えた (2/3) 「格差社会」が形成されていく姿

2020年3月18日 06:57

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 厳しい実力主義の見返りなどではないが、実力のある社員には高額の給与を出してくる。確かに、企業としては「実力」が全てということが短期的にはあるが、その判断の公平性が問われてきてもいるのが現代だ。

【前回は】トヨタ春闘「ベアゼロ」で見えた (1/3) 「これ以上のベア上昇は競争力が危うくなる」

 人間社会では「派閥争い」が常であり、権限を握ったものの支配が全てを左右しているのも事実だ。そうした「支配権(決定権)」を持つのが企業側であり、社員は弱い立場であるのは確かなことだ。そこで、労働法により「団結権・団体交渉権」などを与えられているのが「労働組合」だ。

 そのため、企業側と労働組合側は対等に話し合える場として「団体交渉」があるのだ。この場では労働者は「みな平等」であり、「企業側と労働組合」もまた対等の権利を保障されている。ただし、「法律の上」に限ってのことであるのが現実だ。

 今では若者が労働組合に入らない情勢となり、労働組合の力が削がれ、会社側の権限が相対的に強まることとなっている。そのため賃金も上がらず、実質ダウンとなる事態を生み出す大きな要因となっている。賃金が上がりすぎれば、グローバル競争となっている現代では、ライバル企業に対して競争力を失い企業そのものが倒産してしまう。それがグローバル経済の怖さだ。

 つまり、賃金の低い労働力をグローバルに得られる情勢の中では、企業の賃金は「世界の低いレベル」に引っ張られてしまうのだ。この30年は中国の賃金レベルに引きずられていたが、中国の賃金レベルが日本を上回るようになっていく昨今では、今度は、アフリカ諸国など、さらに賃金レベルの低いところに引きずられることとなる。

 企業家と労働者の賃金レベルはますます開きが大きくなり、「格差社会」が形成されていく。それが、中国の共産党(労働者の党)の独裁政権下で、激しく格差社会になっていくのは異様でもあり、「人間の性に逆らわねば民主主義が行われない」現実が痛々しい。

 そして、1%の高額所得者が人類全体の所得の半分を握る状態となっている。これはさらに開いていくと言われている。なのに、「異常事態」と認識する人も少ない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: トヨタ春闘「ベアゼロ」で見えた (3/3) 新しくて古い「年功序列」廃止の努力

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