水素利用の活性化促進へ 地方から施策を提案する協議会、トヨタなどが協働

2020年3月10日 07:10

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記事提供元:エコノミックニュース

 水素を次世代の重要なエネルギーと捉えて、水素の利用推進に取り組む民間企業10社は、中部圏における水素の需要拡大と安定的な利用のためのサプライチェーンの構築を目指し、水素の大規模利用の可能性を検討する「中部圏水素利用協議会」を立ち上げたと発表した。

 この協議会は、石油・ガス・電力などのエネルギー、石油化学、自動車、金融など多様な業界の企業が参画し、産業界全体で横断的に検討を進める日本で初めての取り組みだ。

 協議会および参画企業は当面、出光興産、岩谷産業、JXTGエネルギー、住友商事、中部電力、東邦ガス、トヨタ自動車、日本エア・リキード合同会社、三井住友銀行、三菱ケミカルである。

 協議会立ち上げの背景にあるのは、現在差し迫っている問題として、地球環境におけるCO2 の排出量削減による地球温暖化の抑制が喫緊の課題であり、これを解決するためには、持続可能で低炭素なエネルギー利用の促進が重要だということ。

 そのため日本政府は、水素を将来の重要なエネルギーのひとつとして位置づけ、「水素社会」の実現に向けた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(以下、ロードマップ)を策定した。この中で、当面の目標として、2030 年に年間30 万トンの水素を利用するという大規模な水素供給システムの確立が掲げられている。

 こうしたなかで、水素の製造・供給分野では、さまざまな企業により社会実装に向けた新たな技術や方策の実証が進みつつあるが、水素を利用する需要サイドでは、大規模な使い方や水素利用量の拡大についての検討が進んでいないが現状です。

 そこで今回、大規模な水素利用の具体的な方策を検討し、供給サイドと連携を図りながら、社会実装に向けた取り組みを進めていくために、中部圏で産業界を横断した協議会を立ち上げることとしたという。

 この協議会では、当面の目標である「2030 年に水素利用量年間30 万トン」に弾みをつけるために、2020年代半ばからの現実的な対応を目指して、活動に取り組んでいく予定だ。

 具体的には海外からの水素大規模輸送が始まることを想定した、中部圏での水素受入拠点から需要サイドまでのサプライチェーンの検討。発電・石油産業等の各製造業の企業活動やモビリティでの利用など、中部圏全体での水素利用量のポテンシャルの試算。各々の需要サイドで受け入れ可能な水素コストの検討および実現に向けた技術面・金融面・制度面での課題を整理し、必要な施策と社会実装につながる事業モデルを提案するという。

 政府が策定したロードマップの実現に向けては、産業界での技術開発、コスト低減努力に加えて、金融界との連携による資金供給スキームの構築、政府のリーダーシップによる制度・インセンティブ設計、規制改革等の三位一体の活動が必要であり、本協議会はその一翼を担うとした。

 この協議会での取り組みが中部圏のみならず全国に拡がるよう、政府とも連携して官民一体となって進めていきたいと考えているとしている。(編集担当:吉田恒)

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