ドバイの無認可取引所「Shelbit」、業務停止命令後も約40億ドルのイラン制裁回避資金を処理か

2026年8月1日 23:06

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記事提供元:Tech Times

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ドバイの規制当局から業務停止命令を受けた無認可の暗号資産事業者「Shelbit」が、2024年5月の稼働開始以降、少なくとも40億ドル(約6360億円、1ドル=159円換算)を処理していたことが、Reutersの調査報道で明らかになった。このうち少なくとも5億4000万ドルは、業務停止命令が出された後にBinanceへ流入したという。背後にはイランの違法ギャンブルネットワークや制裁回避の動きがあるとされ、規制当局が拠点を閉鎖するよりも速く再構築される制裁回避インフラの実態が浮き彫りになっている。

■規制当局の命令を無視し続けた「ゴースト取引所」

ドバイの暗号資産規制当局であるVARAは2025年1月2日、Shelbit General Trading L.L.C.に対し、無認可での暗号資産事業を直ちに停止するよう命じる正式な業務停止命令を出した。しかし、Shelbitはこれに従わなかった。その後約18カ月にわたり、格安ホテルの上階にある郵便物の受取先を登録住所とし、公開ウェブサイトも持たないこの「ゴースト取引所」は、資金を動かし続けた。

2026年7月31日に公開されたReutersの調査報道が浮き彫りにしたのは、執行命令から実際の運営停止までに生じた約18カ月の空白である。イランの制裁回避インフラは、十分なリソースを持つ国・地域の規制当局でさえ、その拠点を閉鎖するより速く新たな拠点を構築できるようになっている。2022年と2023年に米国がBinanceへの圧力を強めると、イラン関連の資金はCoinExへ移った。2026年6月にTRM LabsがCoinExの資金の流れを明らかにした時点で、Shelbitはすでに1年以上稼働していた。ネットワークは一つの拠点が摘発されても崩壊せず、別の場所へ移るのである。

Reutersの調査によると、VARAが最初の業務停止命令を出してからShelbitが最終的に停止するまでの約18カ月間に、同事業者が処理した資金のうち少なくとも5億4000万ドル(約858億6000万円、1ドル=159円換算)が、世界最大の暗号資産取引所Binanceに流入した。この金額は、2024年5月以降に調査関係者がShelbit関連アドレスからBinanceへの流入を追跡した総額6億7600万ドル(約1074億8400万円、同)の一部である。

■資金源は違法ギャンブル、表舞台にはインフルエンサー

資金の出所は、麻薬取引の収益やランサムウェアの支払いではなく、ギャンブルの賭け金だった。Shelbitをめぐる調査の中心にあるギャンブルネットワークは、イランの利用者にスロット、ブラックジャック、ルーレットを提供する2000以上のペルシア語サイトに及ぶ。Reutersによると、イランでは刑法第705条と2023年の法改正によってギャンブルが違法とされ、鞭打ちから禁錮までの刑罰が科される可能性がある。

この事業の表舞台に立つのは、2人のソーシャルメディア・インフルエンサーである。Sasha Sobhani氏は、元イラン高官の外交官兼閣僚の息子で、父親は「非イスラム的」とする行動を理由に、同氏と関係を断ったと公に表明している。Sobhani氏は、歌手でインフルエンサーのPooyan Mokhtari氏とともにギャンブルサイトを宣伝している。

The Business Standardによると、Mokhtari氏は2026年4月にドバイで逮捕され、UAE当局からイランのテロ組織に資金を提供した疑いをかけられた。その後、国外退去処分を受け、香港へ移ったという。両氏は違法ギャンブル網で果たした役割をめぐり、取引所運営者のSiavash Kayvanpour氏とともに、2023年にイランの裁判所で有罪判決を受けている。

両氏はReutersに対し、すべての疑惑を否定した。Sobhani氏は、マネーロンダリング、制裁回避、テロ資金供与への関与を「断固として」否定し、ギャンブルサイトとの関係は、有償のソーシャルメディア広告に限られると説明した。Mokhtari氏はIRGC(イスラム革命防衛隊)の一員であることを否定した。一方、両氏ともネットワークの金融インフラと取引していたこと自体は否定しなかった。

Infobloxの分析に基づくReutersの報道によると、これらのギャンブルサイトは、共通の運営者とのつながりを示すソフトウェアや技術的特徴を共有している。ブランド名、登録日、外観が異なる数十のサイトで、基盤となる技術的な痕跡が一致していた。これは、同じ厨房で作った料理を、異なる看板の店舗で提供しているようなものだ。

■ブロックチェーン分析が明らかにした40億ドルの流れ

パブリックブロックチェーンにはすべての取引が恒久的に記録されるため、資金の流れを追跡できる。Reutersのためにデータを確認した調査関係者によると、Shelbitは2024年5月の稼働開始以降、少なくとも40億ドル(約6360億円、1ドル=159円換算)を処理した。この取引量は、多くの認可済みプラットフォームが10年間で扱う額を上回り、2026年5月の別の措置で米国政府がイランから押収した額のおよそ4倍に当たるという。

TRM Labsと、Reutersが確認した機密データについて話すため匿名を求めた別のブロックチェーン調査会社2社は、ヒューリスティック・クラスタリングと取引タイミング分析を用いて資金の流れを追跡した。この手法では、同じ仲介アドレスと繰り返し取引するウォレットアドレス群や、共通する手数料の支払いパターン、個人利用者ではなく単一の組織的運営者によるものとみられる取引タイミングなどを手掛かりにする。ブロックチェーンの記録は恒久的で改ざんが困難なため、プラットフォームがオフラインになっても痕跡は消えず、新たな記録が加わらなくなるだけである。

調査関係者によると、Shelbitのウォレットは、イラン中央銀行、イスラエル政府が革命防衛隊と関連づけたウォレット、テヘランを拠点とする国内取引所Nobitexと直接取引していた。イラン中央銀行は、IRGC、クドス部隊、ヒズボラへの資金支援を理由として、2019年から米国の対テロ制裁の対象となっている。Nobitexも、以前のReutersの調査を受け、2026年に米財務省から制裁を科された。

ブロックチェーン調査関係者は、イラン中央銀行に関連する少なくとも1億2500万ドル(約198億7500万円)がShelbitへ直接流れたことを突き止めた。さらに、イランのビットコイン採掘事業から仲介ウォレットを経由し、2000万ドル(約31億8000万円)がShelbitへ流れたとみられている。

国連薬物犯罪事務所で7年間にわたり違法ギャンブルを調査した経験を持つTRM Labsのシニアアナリスト、John Wojcik氏は、その規模についてReutersに次のように語った。「これは、これまでに発見されたイランの違法ギャンブルネットワークとしては群を抜いて最大であり、世界でも最大級の一つだ」

イラン関連の資金の流れを専門とする独立系ブロックチェーン研究者のRich Sanders氏も、Reutersに対して「これはIRGCの作戦であり、誰の目にも明らかだ」と述べた。ただしReutersは、IRGCがShelbitまたはギャンブルネットワークを直接支配しているかどうかを独自に確認できなかったとしている。この違いは、今後の執行措置において法的に重要な意味を持つ可能性がある。

■ウェブサイトを持たない事業者からBinanceへ流入した6億7600万ドル

Reutersが引用した調査関係者によると、2024年5月以降、少なくとも6億7600万ドル(約1074億8400万円)のShelbit関連資金がBinanceに流入した。このうち約5億4000万ドル(約858億6000万円)は、VARAが2025年1月にShelbitへ業務停止を命じた後に流入している。

Binanceは、イランをはじめとする制裁対象国・地域に関係する制裁違反をめぐり、2023年に米当局との43億ドル(約6837億円)の包括的な和解の一環として罪を認めている。同社は今回の調査結果に反論し、Reutersに対して、ShelbitがBinance上に正式なアカウントを保有したことはなく、独立系ブロックチェーン分析会社も問題の取引を高リスクと判定していなかったと説明した。

Binanceによると、同社のコンプライアンス部門はShelbitに関連する利用者を調査し、該当するアカウントを凍結したうえで法執行機関へ報告した。一方、6億7600万ドルのShelbit関連資金がBinanceの利用者を経由したこと自体は否定しなかった。

Binanceは、Shelbit自身がアカウントを保有することと、Shelbit関連の資金が利用者を通じてプラットフォームへ到達することを区別している。しかし、この違いは、Binanceが示唆するほど大きな意味を持たない可能性がある。OFAC(米財務省外国資産管理局)の厳格責任基準では、取引所が意図的に取引を支援したとの証拠がなくても、制裁違反に対する民事制裁金が科される場合がある。

OFACはBinanceとの和解文書で、「アルゴリズムその他の『自律型』システムまたは計算式が、対象取引を実行する仕組みとして機能していたとしても、それは抗弁にはならない」と明記している。OFACがShelbit関連アドレスを正式に制裁対象へ指定した場合、その資金を処理した取引所は、資金が制裁対象ネットワークに由来すると知っていたかどうかにかかわらず、法的責任を問われる可能性がある。

■ドバイ規制当局の摘発と運営停止までのタイムラグ

VARAの公式な執行記録を見ると、事情は表面的な説明より複雑である。2026年7月24日付の罰金通知は、VARAがShelbitに講じた最初の措置ではなく、2回目だった。VARAはすでに2025年1月2日、Shelbitが有効な規制ライセンスを持たずに事業を行っているとして、正式な業務停止命令を出していた。

それでもShelbitは運営を続けた。最初の執行命令後の数カ月間にも、数億ドルの追加資金がShelbitを経由してBinanceへ流れた。VARAの2026年7月24日付の罰金通知には、Shelbitが有効なライセンスなしで暗号資産サービスを提供し、UAE法で義務づけられたKYC(顧客確認)を行わずに利用者を受け入れ、無許可でサービスを宣伝し続けていたことが記録されている。

これは、主として規制当局の失敗を物語る事例ではない。VARAはShelbitを特定し、法的拘束力のある命令を出し、執行手続きを進めた。問題は、規制上の適正手続きと、制裁回避拠点の運営速度との間に大きな差があることだ。発見から停止までに要した期間は、Shelbitの40億ドルに上る取引量の大半が通過するのに十分な長さだった。

VARAはドバイを、オフショア暗号資産市場の「無法地帯」に代わる、コンプライアンスを重視した選択肢として位置づけてきた。ドバイには実効的なライセンス要件と執行部門が存在する。だが、Shelbitが26カ月にわたってドバイの金融網を利用したことは、その位置づけを試す事例となった。VARAは手続き上適切に対応していたかどうかとは別に、この問題について公に説明する必要がある。

米財務省はReutersの調査結果を認識していることを確認し、OFACが状況を検討するとともに、イラン政権に関連するデジタル資産を標的とする措置を進めていると述べた。現時点で正式な制裁指定は発表されていない。

UAE外務省はReutersへの声明で、同国は「最高水準の国際基準を順守し、あらゆる分野で厳格な監督を維持するとともに、あらゆる形態の不正な資金の流れを遮断・抑止するため、国際的なパートナーと緊密に協力している」と述べた。

■OFACの制裁指定が取引所に与える影響

OFACがShelbit関連のウォレットアドレスを正式に指定し、SDN(特別指定国民・制裁対象者)リストに追加した場合、その影響は、現在オフラインとなっているShelbit自体にとどまらない。法令を順守する取引所やウォレット事業者には、SDNリストとの照合をリアルタイムで行う法的義務がある。指定対象アドレスまで追跡できる取引を処理した取引所は、その取引が指定日の前後のいずれに行われたかにかかわらず、厳格責任基準に基づく法的責任を問われる可能性がある。

これは理論上だけの懸念ではない。OFACが2026年6月2日、以前の執行措置の一環としてイランの国内取引所4社、Nobitex、Wallex、BitPin、Ramzinexを制裁対象に指定すると、CoinExとイラン関連事業体との取引量は、1日約100万ドル(約1億5900万円)から15万ドル(約2385万円)未満へ直ちに減少した。

この指定はCoinEx自体を直接の対象としたものではない。それでも、イラン関連資金を引き続き処理しようとする取引所に対する、取引先側からのコンプライアンス圧力が、数時間のうちに事業環境を一変させた。

過去の執行措置で繰り返し確認されてきた資金移動の動きからみて、今回も同じ展開になると考えられる。現在はオフラインとなったShelbitのインフラを経由していた取引量は、次の拠点へ移るだろう。その拠点を調査関係者がすでに特定しているかどうかは、公には明らかになっていない。

■今後の焦点:OFACの判断とイランの次なる回避拠点

今回明らかになったネットワークは、2016年以降に摘発されたイランの制裁回避網として最大級のものの一つである。Reutersによると、米当局は2016年、トルコを石油と金の取引の中継地として利用した約200億ドル(約3兆1800億円)規模のIRGC関連スキームを解体した。この事件ではトルコの金取引業者Reza Zarrab氏が訴追され、国際銀行業界に衝撃が広がった。

Shelbitの事例では、従来の銀行記録ではなく、ブロックチェーンデータを通じて資金の流れが調査された。情報提供者も内部関係者の協力も必要とせず、恒久的に残る公開台帳と、それを読み解くツールを持つ分析会社によって実態が明らかになった。

TRM Labsの推計によると、イランを拠点とする暗号資産エコシステムでは年間約80億~100億ドル(約1兆2720億~1兆5900億円)が動き、その相当部分がIRGC関連の活動と結びついている。Shelbitは13カ月で40億ドルを動かした。一方、その前段階の拠点とされるCoinExは、7年間で38億4000万ドル(約6105億6000万円)を処理した。

この加速自体が重要なデータである。後続の拠点ほど短期間で構築され、急速に規模を拡大し、より早く特定されるようになっている。執行当局がその速度に追いつけるかどうかについては、OFACの次の措置が、一つの答えを示すことになる。

■注目ポイントQ&A

●ウェブサイトを持たない暗号資産事業者が、どのように40億ドルを処理したのですか?

Shelbitは一般利用者向けの取引所ではなく、調査関係者が「ホールセールブローカー」またはOTC(店頭取引)デスクと呼ぶ形態で運営されていたためです。個人の一般利用者ではなく、イラン中央銀行、ギャンブルネットワーク、IRGC関連ウォレットなど、少数の大口取引相手にサービスを提供していました。

このような規模で事業を行う場合、一般消費者向けのウェブサイトは必須ではありません。必要なのはウォレット基盤、Binanceのような大手取引所との接続を通じた流動性へのアクセス、取引に応じる相手です。取引記録はブロックチェーン上で分析会社から確認でき、Shelbitの存在が明らかになったのも、それらの記録が残っていたためです。

公開ウェブサイトがないことは、大規模な暗号資産移動の障害にはなりません。一般利用者向けサービスを監督する規制当局が、その事業を発見するための経路が一つ減るだけです。

●Binanceに到達した6億7600万ドルは、Binanceの利用者を危険にさらしますか?

OFACの厳格責任基準では、指定対象アドレスまで追跡できる資金を処理した取引所は、資金の出所を知っていたかどうかにかかわらず、コンプライアンス調査の対象となる可能性があります。

Binanceは、同社のコンプライアンス制度によってShelbit関連のアカウントを特定し、凍結したうえで法執行機関へ報告したと説明しています。Shelbit関連資金をめぐり、Binanceに対する正式なOFAC措置は発表されていません。

ただし、Binance自身の2023年の和解で示された前例では、記録された資金の流れだけでも違反認定の根拠となり得ます。主要取引所で多額の資産を保有する利用者は、本人に不正行為がなくても、OFACの執行手続きや調査の過程で、アカウントが一時的に凍結されたり、出金が中断されたりする可能性があることを理解しておく必要があります。

●なぜイラン関連の暗号資産制裁事件にドバイがたびたび登場するのですか?

ドバイは米国とEU域外にある主要な規制型暗号資産ハブで、VARAは2022年以降、実効的なライセンス制度を整備してきました。この高度な規制環境は、合法・非合法の双方の事業者を引きつけます。

合法的な事業者が規制上の信頼性を求める一方、悪質な事業者はUAEでの法人登録を使って正当な事業者であるかのように見せながら、VARAの実効的な監督が及ばない形で活動します。

VARAは無認可事業者を発見して措置を講じており、Shelbitに対しても2025年1月に最初の業務停止命令を出しました。しかし、発見、法的手続き、実際の運営停止までの期間は、数億ドルの不正資金が移動するには十分な長さでした。VARAのライセンス制度に、この時間差を短縮するための十分な手段があるのか、UAEには公の説明を求める圧力が強まっています。

●イランはどのように違法ギャンブルを利用して、制裁を回避する資金を動かしているのですか?

イランでは刑法第705条によってギャンブルが禁止されています。しかし調査関係者は、IRGCがイラン国内から利用できる主要なオンラインギャンブルサイトを支配し、資金を生み出して移動させる仕組みとして利用している可能性があるとみています。

イランの利用者は、中央銀行が管理する国内決済システムを使ってギャンブル口座へ入金します。すでにイラン国内の金融網に入っている資金を集約し、Shelbitのような仲介事業者へ送り、暗号資産に転換して国外の取引所へ移す仕組みです。

ギャンブルを介することで、国外へ向かう資金が組織的なものであることを見えにくくする、大量の少額取引が生まれます。調査関係者は、これを、これまでに確認されたイランの暗号資産を使った制裁回避インフラの中で、構造的に最も高度な形態だと説明しています。ただしReutersは、IRGCがShelbitまたはギャンブルネットワークを直接支配しているかどうかは確認できなかったとしています。

元記事: Ghost Exchange Shelbit Moved $4B in Iran Sanctions Funds Through Dubai

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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