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楽天が発表した携帯電話料金の価格破壊! (下) スペースモバイルやシステムの仮想化で大化けするか?
(画像: 楽天モバイルの発表資料より)[写真拡大]
楽天が今回始める携帯電話サービスのキモは、「Rakuten Link」というコミュニケーションアプリを通して、電話やSNSサービスを提供するところにある。そのため、楽天自社回線のフルサービスを享受するためには、スマートフォンがRakuten Linkの対応機種でなければならない。
【前回は】楽天が発表した携帯電話料金の価格破壊! (上) 料金プランは"激安"の1つだけ
サービススタート時点で用意されている機種は、全てAndroidスマートフォンであり、iPhoneは含まれていない。おそらく他キャリアのユーザーの多くは、スマホを買い替えなければ楽天のサービスを利用することは出来ないだろう。
楽天は同日、英ボーダフォンも出資している米AST & Science社への出資を行い、戦略的パートナーシップを締結したと発表した。AST & Science社はスマートフォンを直接、低軌道人工衛星に接続させる「SpaceMobile(スペースモバイル)」という衛星通信ネットワークを、構築しようとしているベンチャー企業だ。目論見通りにこの構想が実現すると、日本全土が余すところなく楽天回線のエリアに取り込まれることになる。
楽天はKDDIとのローミングを利用しながら地方の基地局設置を進めると共に、一気に日本の地域カバー率も人口カバー率も100%となる通信会社に変身する可能性を得たということだ。
楽天は仮想化技術を通信ネットワークに採用した、世界の先駆けだ。専用機器をソフトウエアで代替するため、初期投資も運用コストも大幅な削減が可能なシステムとして注目を集めている。
4Gから5Gへの移行もソフトウエアの更新で可能だというから、5Gでは3大キャリアに先んじることすら期待させられる。楽天の挑戦が成功すれば、世界の通信が一気に仮想化に向かうと見られている。
計画通りに機能すると、完全仮想化通信システムが楽天の商品リストに加わる。自ら結果を出して商機に転ずるという、理想的な展開が見られるかも知れない。
楽天は19年10月に予定されていた携帯電話通信事業者への本格参入を見送り、首都圏の基地局設置を進めてきたが、質量ともに納得のいく設備体制が構築されたようだ。今回発表されたシンプルな価格プランは、先行する3社の同程度のプランと比較して半額以下という圧倒的なインパクトを見せた。
自前の基地局を使用する首都圏エリアと、ローミングによる地方エリアとの差はあるにしても、契約者300万名に対しては通話料を除く月額使用料2980円を、1年間無料にするという思い切った差別化を打ち出した。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは表面上鷹揚に構えているようだが、楽天の契約スピードが予想を上回れば対抗策に迫られることは必至だ。割高な水準で膠着状態にあった日本の携帯電話料金が、いよいよ本格的な価格競争の時代を迎えることになりそうだ。出鼻を挫くような通信トラブルが発生しないことを切に望みたい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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