新型コロナ肺炎に他のウイルス感染症治療薬は効くのか

2020年2月25日 12:34

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、他の感染症治療薬は効果があるのだろうか。厚生労働省がインフルエンザやHIVなどの治療薬を用いた治験について言及し、それらの治療薬を患者に効果があったというニュースも聞かれる中、気になるところである。

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 そもそも肺炎を起こす原因となるのは、細菌やウイルス、マイコプラズマなどである。原因となっているものによって、治療に使われる薬は異なる。

 まず細菌が原因の場合は、抗菌薬を用いる。抗菌薬には大きくわけて、細菌の細胞壁の合成をできなくするもの、細菌が生きるために必要なタンパク質を作れなくするもの、細菌が増殖するときのDNAなどの合成をできなくするものなどがある。

 抗菌剤によって効く菌、効かない菌があり、医師は症状や菌の検査などをして抗菌剤を選んでいる。

 マイコプラズマはサイズの小さい細菌の一種で、細胞壁を持っていない。そのため細胞壁に効く抗菌剤は効かない。マクロライド系というタンパク質合成をできなくするタイプや、キノロン系というDNAに作用する抗菌剤が主に用いられる。

 今急速に広まっているのは、コロナウイルスを原因とする肺炎だ。細菌に効く抗菌剤は300種類近くあるが、ウイルスに効く薬はずっと少なく50種類ほどしかない。ウイルスの治療薬を開発するのは簡単ではない。

 その理由のひとつは、ウイルスのサイズがとても小さく殻とDNA(またはRNA)だけからなるというシンプルな作りのため、薬が攻撃できる対象が少ないこと。さらにウイルスは、感染した相手(人間)の細胞の器官をのっとって増殖するため、ウイルスだけを攻撃するのがとても難しい。

 ウイルス感染を治療する薬としては、インフルエンザ、HIV、C型肝炎、マラリアなどの治療薬がある。河野太郎防衛大臣の23日のツイートによると、新型コロナウイルス感染症の治療の治験候補になっているのがカレトラ(HIV治療薬)、アビガン(インフルエンザ治療薬)、レムデシビル(エボラ出血熱治療薬)だ。

 カトレラはウイルスが宿主(人間)細胞をのっとって合成させたタンパク質を、さらにウイルスが利用できるサイズに切断するための酵素を働けなくする薬(プロテアーゼ阻害薬)だ。

 アビガンは胎児に影響があることがわかり、現在はインフルエンザの通常の治療に使われていないが、新型インフルエンザ発生時に備えて備蓄されている薬だ。これは、ウイルスのRNA合成をできなくしてウイルスの増殖を阻害する。他のウイルス感染症に対する効果の報告も多い薬だ。

 レムデシビルは核酸アナログという、RNAやDNAの素材に似ている物質だ。遺伝子の偽の材料をウイルスに与えて正しいコピーを作れなくし、増殖を抑える薬だ。

 これらの抗ウイルス薬は、様々なウイルスに共通している遺伝子や酵素、増殖の仕組みに作用するため、新型コロナウイルスに効果を持つ可能性は十分あるだろう。世界中で急ピッチ行われている治験の結果を待ちたい。またウイルスの培養にはすでに成功しているため、ワクチンの作成も進んでいくだろう。

 その結果を待つ間、私たちは基本的な手洗いや咳エチケットなどでしっかり予防して流行を少しでも抑えていきたい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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