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筑波大ら、導電性を制御可能なナノシートを開発 新しい電子デバイス等に期待
ホウ化水素ナノシートを化学的に合成した研究の概要。(画像: 筑波大学の発表資料より)[写真拡大]
筑波大学、物質・材料研究機構、東京大学等の共同研究チームは10日、導電性を制御可能なホウ化水素ナノシートの開発に成功したと発表した。研究チームでは、新しい電子デバイス、センサー、触媒等の開発につながるのではないかと期待している。
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■ナノシートとは?
ナノシートとは、その厚さが、原子や分子1個から数個分しかない、ナノメートルサイズの薄膜のことをいう。このナノシートは、その薄さゆえに表面積が大きく、柔軟、軽量で、しかも特異な電子状態を取るものが多く、新しい触媒や電子デバイスの素材として期待されている。その代表例が、炭素原子1層からなるグラフェンや、ホウ化水素分子数層からなるホウ化水素ナノシートだ。
グラフェンには、さまざまな優れた特性があり、幅広い産業分野での応用が期待されているが、ホウ化水素ナノシートには、このグラフェンを凌駕する電子デバイス特性や水素吸蔵特性があることが理論的には予想されていた。
しかし、ホウ化水素ナノシートの合成は難しく、実現したのは2017年になってからだった。しかも、理論的な予想に反して導電性がなく、絶縁体だった。絶縁体では電子デバイスとしては使えない。
■ホウ化水素ナノシートに導電性を持たせることに成功
そこで研究チームは、さまざまに条件を変えて実験を繰り返し、ホウ化水素ナノシートに導電性を持たせるためには、その純度が重要であることを突き止めた。つまり、合成に使った有機分子が不純物としてホウ化水素ナノシートに付着することで、導電性が失われていたのだ。そのため、ホウ化水素ナノシートを高純度にすることで、ホウ化水素ナノシートに高い導電性(0.13S/cm)を持たせることに成功した。
ところで、研究チームによれば、ホウ化水素ナノシートに有機分子を付着させた場合、仮に導電性があっても、温度が30度前後に上昇すると導電性が失われ、絶縁体になるという。しかも、この変化は可逆的で、温度が低下すると元の導電性が回復するという。ホウ化水素ナノシートのこの特性を応用すれば、分子が付着することによる分子応答性の新しいセンサーの開発につながる可能性もある。
研究チームでは、軽量、柔軟でしかも導電性が制御可能なホウ化水素ナノシートは、ウェアラブル端末等の電子デバイスの他にも、分子応答性のセンサー、さらに分子吸着性を利用した触媒材料等の開発にも応用できるのではないかと期待している。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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