やはりエンジンか? 日産が熱効率45%に達する EGRで触媒使って水素発生

2019年12月2日 18:38

印刷

 2030年にかけて、自動車によるCO2排出量の測定方法が変わる可能性がある。これまでは自動車の走行時だけの二酸化炭素(CO2)排出量の評価だったが、より実態に沿った排出規制に効果がある、生産から廃棄、再利用まで自動車製品のライフサイクル全体で評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」変わる可能性が大きい。当たり前だが、地球温暖化防止を実現しないと「人類が生き残れない」ことも考えられる現状だ。表面上の走行時の数値だけでCO2排出量を評価しては、実効果が出て来ない。

【こちらも】日産・e-POWERなど発電専用エンジンのこれから(1) 騒音・振動・熱効率の戦い

 また、最初から「EVありき」では発電の問題が取り残される。2030年には、「エンジン車・PHEV・HEV」つまりエンジン付き自動車が9割を占めると考えられている。エンジンを使った個別発電は災害にも強く、一方自然エネルギーを使った発電が安定性の問題から思うように開発されていない現状では、エンジンの熱効率向上や回生技術を開発したほうが効果が出るのかもしれないのだ。

 そして、トヨタ、日産、ホンダがしのぎを削る中で、日産が革新的技術を開発してきた。水素をエンジンに吸入させ、爆発を促進し熱効率を上げてきたのだ。試作直列4気筒エンジンで、燃費性能を3.6%高めた。自動車各社は燃費性能を0.1%刻みで高める努力をしているが、3.6%は大幅な向上と言える。

 日産エンジンの画期的なその仕組みは、EGR(排ガス循環装置)の中に触媒を入れ、再度燃料噴射を行って燃料と排気ガスを触媒に通し、水素に変換するものだ。しかも、触媒は現在排気ガス浄化に使われているものを変化させたもので、コストは数千円程度と見られ、実用化の可能性が高いのだ。

 さらに良いことは、現在排気ガスの熱として捨てられているエネルギーを回収するシステムであることだ。排気ガス、ラジエターから熱として捨てられているエネルギーを回収する装置としては「ターボチャージャー」が考えられる。しかし、排気ガスの熱エネルギーを無駄にしているのでは、回生とは言えない。

従来、ラジエター、排気ガスなどの熱エネルギーを回生するメカニズムとしては「蒸気機関」が考えられるが、これは装置が大きく重いといった問題点がある。その点でも「排気ガス改質」で水素を発生させるのは「グッドアイディア」と言える。

 水素の最小着火エネルギーは0.02mJであり、水素はきわめて着火しやすい気体だ。ガソリンを気化して燃焼させる場合と比べると、4~5倍燃焼速度は速い。さらにEGRで再循環させると爆発しにくく、それほどの量は吸入できないが、水素が混ざることで着火しやすく、燃焼時間も短くなる。そこで、EGRの量を増やして燃費向上に役立てることは効果がある。

 日産が1歩を踏みだした。このエンジンをレンジエクステンダーの発電用エンジンとして使うと、理想的回転数で回すことが出来るため、日産HVの仕組みではより一層有利だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事