JAXAら、りゅう座流星群の起源となる彗星から有機物を発見 木星近辺で誕生か

2019年11月23日 17:15

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2018年に観測されたジャコビニ・ツィナー彗星 (c) Michael Jaeger

2018年に観測されたジャコビニ・ツィナー彗星 (c) Michael Jaeger[写真拡大]

 国立天文台は19日、ジャコビニ・ツィナー彗星から脂肪族炭化水素や多環芳香族炭化水素といった複数の有機分子が含まれる可能性があると発表した。地球上の生命の起源となる彗星誕生のプロセスも明らかにされ、太古から流れ星として地球上に有機物を届けた可能性が示唆される。

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■有機物を地球に届ける流れ星

 地球上に生命が誕生した原因として、いん石や彗星などの天体の衝突が考えられる。流れ星もまた地球上に水や有機物を提供する天体のひとつとして考えられる。

 流れ星は、彗星から生まれた塵が地球の大気を通過する際に、摩擦により大気や塵が光を放射する現象だ。流れ星の原因となる彗星を解明することが、地球上の生命誕生の謎解明に貢献する。だが彗星にどの程度有機物が存在するかや、どのような経路で地球に運ばれたかなど、不明な点も多いという。

■原始太陽系の木星近辺で誕生した彗星

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所、京都産業大学、国立天文台、岡山理科大学の研究者から構成されるグループが注目したのが、ジャコビニ・ツィナー彗星と呼ばれる周期6.6年の短周期彗星だ。この彗星は、10月に観測されるりゅう座流星群の起源としても知られている。ジャコビニ・ツィナー彗星は、炭素を含む分子や高い揮発性分子といった多くの分子が欠乏し、全彗星の約6パーセントしか存在しない特殊な彗星であることが知られていた。

 研究グループは、すばる望遠鏡に搭載された中間赤外線観測装置によって2005年に取得されたジャコビニ・ツィナー彗星の分光データを解析した。その結果、シリケイト(ケイ酸塩)鉱物に由来する光のスペクトル(輝線)や未同定のものが発見された。未同定のスペクトルを解析した結果、脂肪族炭化水素や多環芳香族炭化水素といった複雑な有機分子に起因する可能性が高いことが判明した。

 研究グループはさらに、含まれるシリケイト鉱物の結晶度からジャコビニ・ツィナー彗星が原始太陽系円盤では木星などの巨大惑星の周惑星円盤中である可能性を突き止めた。原始太陽系円盤は太陽系が現在の姿になる前の原始的な状態の天体であり、彗星が約46億年前に誕生し、地球に有機物を供給したと予想される。

 研究グループによると、周惑星円盤が高密度で高温であることがジャコビニ・ツィナー彗星に有機物が含まれる原因だという。今後は、ジャコビニ・ツィナー彗星以外の彗星から有機物が検出されるかや、その分子構造などについてさらに研究の必要があるとしている。

 研究の詳細は、米天文学会誌Icarusオンライン版にて18日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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