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プロ経営者:松本晃氏がまた動き始めた
プロ中のプロ経営者と評される松本晃氏(前ライザップCOO、元カルビーCEO)が10月10日、パイオニアの社外取締役に就任することが明らかにされた。周知の通りパイオニアは主軸のカーナビ事業の不振などで経営危機に陥り今年3月、香港系投資ファンドに買収された。人員削減・不採算部門からの徹底が進められてきたがここにきての松本氏の社外取締役就任は、具体的な事業展開(再建)に向けてファンド側も「松本氏の存在感を認めたゆえ」と捉えることができる。
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余談だが松本氏は私より2歳年上。今年のノーベル化学賞を「リチウム電池開発」で受賞した吉野彰氏は1歳年上。同じ団塊の世代。
改めて松本氏が「プロ経営者」と称されるに至った「何故」を振りかえってみた。京大大学院(農学研究科修士課程)を経て松本氏は、伊藤忠に就職している。1986年39歳の時、センチュリー・メディカル(最先端医療機器の輸入販売企業)に取締役営業部長として出向。任期6年間で売上を20倍余りに増やし、黒字転換の牽引役となった。
伊藤忠に関しては「起業家を生み出す土壌が醸成された企業」と評価される。が、松本氏を知るジャーナリストからこう聞かされた。「彼は、取り立てて給料が上がるわけでもなく、既に40歳代半ばに達し(伊藤忠での)出世レースにも出遅れたという思いが強かったことも事実。外からの評価に身を委ねてみたいという認識をもった」。
伊藤忠を退社。「センチュリー・メディカルでの実績は広く知られるところとなっていたから、20数社からオファーがあった」(先のジャーナリスト)という。松本氏の松本氏たる所以は、「当時、売上の頭打ち・利益の希薄化に直面していた(現在の)ジョンソン・エンド・ジョンソン」のオファーを受け入れた点に象徴的といえる。
52歳で社長に就任。その後最高顧問を歴任。その間の6年間に「売上5倍増、大幅黒字」を実現している。そして招きに応じて転じたのがカルビーのCEO。一族以外から初の経営トップに立った。
カルビーも当時は、詳細は省くが「袋小路」に迷い込んでいた。ゆえの、3代続いた一族経営からの転換だった。松本氏はカルビーで「役目は終わった」と身を引く際に「そんなに難しいことをやったわけではない。品質・供給体制は問題なかった。が、コスト意識が全然なかった。そこに手を入れただけ。コスト低減⇒価格低減⇒競争力強化⇒収益量向上(8期連続の増収増益を実現)という流れを作っただけ」と語っている。
さて、松本氏はパイオニアを蘇生することができるのか。10月11日付けの朝日新聞デジタル版は「自動車関連業界はド素人」としながらも松本氏は、「かつて輝いていた企業が苦しんでいると聞き、好奇心をくすぐられた。しんどい会社をよくすることに生きがいを感じている」と語ったと伝えている。
本心は、「プロ経営者ぶりをまたぞろ見せつけてくれ。団塊の世代の仲間として応援している。祈念している」である。だがここでは「とくとお手並み拝見」としておく。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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