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岩石 (かんらん岩) 弾丸をGibeon鉄隕石に高速度衝突 (6.97 km/s) させてできるクレーター部分の詳細。岩石質物質の液体 (暗い灰色)と微粒の鉄の液体 (明るい灰色の球体) は、混ざりあわずに分散した状態で固化している (c) Brian May, Claudia Manzoni, and Guy Libourel et al.[写真拡大]
太陽系誕生直後には微惑星どうしの衝突が頻発したと考えられている。その衝突速度は秒速数kmつまり、時速に換算すると1万kmをはるかに超え、それが衝突によって瞬時にして速度の大半を奪われ、大量の運動エネルギーが一瞬にして熱エネルギーに変化する。
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このようなメカニズムで微惑星の表面温度は溶融状態になるほど高温になったと考えられている。特に体積の小さな微惑星では全体が溶融し、比重の大きな溶融金属(特に鉄分)が中心部に集まり、表層近くには比重の小さな非金属が集まる状況が起きていた。
衝突から時間が経過すると、微惑星は表層が冷えて固まり地殻を形成し、その内部が液状のマントルに、芯部がコアへと分化していった。だが、この過程において水のような揮発成分は蒸発し、宇宙空間へと飛散していったと考えられている。
地球のような大きな惑星は誕生から40億年以上経過しても、なお液状のマントルやコアが存在しているが、微惑星の場合、時間の経過とともにマントルもコアも冷えて固まっていったと考えられる。
このような微惑星は時間の経過とともに、地殻やマントルに相当する部分が繰り返される衝突ではぎとられ、コアがむき出しになったものも存在していることは、地球に飛来した鉄隕石によって明らかである。
だが、鉄の塊であるはずコアがむき出しになった小惑星の表面には、ケイ酸塩や水分を含んだ鉱物が存在していることが望遠鏡観察などにより明らかとなっいる。本来鉄分しか存在しないはずのコアがむき出しの小惑星の表面における、ケイ酸塩や含水鉱物の形成メカニズムについては疑問が残されたままになっていた。
この謎の解明に挑んだのが神戸大学、フランスのコートダジュール大学、JAXAの共同チームで、鉄分を多く含む物体をターゲットとして、岩石を主成分とする弾丸を秒速3.39kmから6.89kmの間で変化させながら、11度にわたる衝突実験を実施した。
この衝突実験で形成されるクレーターサイズは6~10mmの範囲にあり、クレーターの端部は金属リップが形成されていた。またクレーター表面は発泡したガラス質や鉄とケイ酸塩の不飽和混合物が観察され、スペクトルの分析により水分の存在も確認された。水分が蒸発せずにクレーター表面に残存する理由は、発泡したガラス質に覆われ保護されるためであることが示唆された。
つまり、初期の太陽系で繰り返された微惑星どうしの衝突の中で、コアがむき出しになった鉄が主成分の微惑星においてケイ酸塩や水分が存在することは、ごく一般的な事象であるという間接的な証拠が、この実験によって確かめられたのである。
今後は衝突条件や弾丸となる岩石成分を変化させ、様々なパターンの小惑星の進化メカニズムを探ってゆくという。新たな大発見の報告がなされることを楽しみにしたいものである。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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