「ボイジャー1号」打ち上げから42年 太陽系圏外まで到達したその軌跡

2019年9月5日 15:08

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「ボイジャー1号」のイメージ図。(c) NASA/JPL-Caltech

「ボイジャー1号」のイメージ図。(c) NASA/JPL-Caltech[写真拡大]

 9月5日でアメリカの惑星探査機ボイジャー1号が打ち上げられて42年になる。またボイジャー2号は、ボイジャー1号より2週間ほど早い8月20日に打ち上げられている。

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 ボイジャー1号は地球から約147天文単位の位置を航行中で、地球からどんどん遠ざかっている。ボイジャー2号は地球から約121天文単位のところを航行中である。

 1天文単位は地球から太陽までの平均距離を意味し、約1億5千万kmである。いずれも42年間の間にとてつもない遠くの宇宙にまで飛んで行ってしまったことになる。

 公転周期が200年未満の短周期彗星の故郷と言われるエッジワース・カイパーベルトが、太陽から30天文単位~400天文単位の範囲とされているが、ボイジャー1号、2号ともその領域にまで到達していることになる。またボイジャー1号は人類が作り上げた物体の中で最も遠くの世界に到達した存在である。

 ボイジャー1号の最初の目標は木星とその衛星、そして次のターゲットは土星とその衛星であったため、それ以上の探査の機能は持たなかった。だが航行中に地上からの遠隔操作により航行システムプログラムの改良を受け、1989年には海王星に到達、見事な写真を地球に送り届けた。地上から航行中の探査機のプログラム改良ができることを確認できたのは、画期的なことであった。

 ボイジャー1号、2号とも太陽系圏外までの飛行を想定していたため、飛行コースは各惑星探査の目的を達しつつ、最短距離で太陽系圏外へと向かう軌道が選択された。もちろん搭載できる燃料は限られているため、各惑星の引力を巧みに利用したスイングバイ航法が採用されたのは言うまでもない。

そのおかげで打ち上げから約42年が経過した現在でもボイジャー1号は秒速約17km、2号は秒速約15kmの速度を保ちながら、太陽系圏外の宇宙を航行し続けることができている。

 ボイジャーは1号、2号ともゴールドディスクが搭載されている。これは金メッキされたアナログレコードだが、これから遭遇するかもしれない未知の知的生命体に向けて地球や人類に関する様々なデータが記録されている。

 太陽に最も近い恒星「プロキシマケンタウリ」までの距離(約4.3光年)を航行するのに、約8万年を要すると考えられているが、地球との交信は電源の寿命があと数年のため、残念ながら知的生命体を発見したという信号を地球人はキャッチできない。

 もし何十万年、何百万年後に知的生命体がボイジャーを発見したとして、そのころ地球では人類は果たして存続できているのだろうか?そんな未来にはわき目もふらずに気の遠くなるような距離と時間を、ボイジャーは今日も黙々と航行し続けている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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