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【もう一つの戦い】トヨタとスズキの資本提携 創業家の強みは変化の時こそ生きてくる
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トヨタとスズキが資本提携に踏み切った。トヨタが960億円でスズキ株の5%程度に出資し、スズキもトヨタに480億円程度を出資すると8月28日に発表された。もちろん、狙いは業務提携関係を発展させ、自動運転などの次世代技術の技術開発を強化することだ。スズキは1千500億円規模、トヨタは1兆円規模の新規開発費を投入しており、この差では世界にスズキはついて行けないと判断している。
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しかし、鈴木修会長は「豊田章男社長とは心が通じる」とも話しており、「カルロスゴーン氏とは通じ合えなかった」とも話している。これは単に人間関係の綾である訳ではない。「創業家」の経営と「金融判断」の経営の差であろう。
国際経営者はどうしても「投資判断」でM&Aなどを重要視する。その経営判断のスパンは5年だ。それは「雇われ経営者」の宿命であり、任期中の業績向上を迫られる。株主が配当を要求しているのだ。
しかし、創業家経営者の宿命は、5年のスパンではなく「永年」のスパンでビジネスモデルをコントロールすることだ。具体的には、「先見の明」を求められることとなる。人生観も違ってくる。社員に対する見方も根本から違ってくる。
「雇われ経営者」であれば、まず優秀で使える社員を求めることとなる。今すぐ成果を出せる人材だ。
一方、「創業家」の社員に対する接し方は、古くは「家族」との捉え方であって決して見限らない。現在では「育てる」感覚が強い。自社で働くことによって生計を立て、家族を持ち人生に成功していく社員を見守る姿勢だ。
鈴木修会長には、スズキと言う企業を生み、育て、共に生きてきた実感が漂っている。今回の資本提携に見えるのは、これからのスズキの行く末を心配し、「困ったらトヨタを頼れ」との遺言のような決断が感じられる。
鈴木会長は、来年で90歳になるそうだ。「私の年齢は7掛けで見てくれ」と記者会見で発言している。豊田章男社長を見る目は自分の子供であり、頼れるパートナーであるのだろう。「お頼み申し上げる」と豊臣秀頼の将来を心配した豊臣秀吉の心境かもしれない。それが、現代自動車産業の激しい変化の時代に生き残れるのか?結果を見てみたいと感じている。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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