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東大など、「液体のり」から造血幹細胞の培養液を作成
50個から増幅した造血幹細胞及び造血前駆細胞(造血幹前駆細胞)。(画像:日本医療研究開発機構発表資料より)[写真拡大]
コロンブスの卵というか、はたまた灯台もと暗しというか。白血病の治療などで大量に必要とされるが、これまで培養が難しいとされていた造血幹細胞を増幅培養するための培養液を、広く流通している安価な「液体のり」(文字通り接着剤の糊の事である)から作成する事に、東大などの研究チームが成功したという。
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研究の中心となったのは東京大学医科学研究所の山崎聡特任准教授。そのほか、スタンフォード大学、理化学研究所などが共同研究に参加し、日本医療研究開発機構(AMED)が支援を行った。
造血幹細胞は、血液疾患の根治療法である骨髄移植において欠かせない存在であり、一般的にはドナーからの供給に頼っている。だが慢性的にドナーは不足しており、将来的な白血病などの血液・免疫疾患患者への応用を目指した造血幹細胞の生体外培養の技術開発が、研究チームによって進められていた。
従来造血幹細胞の培養に使われていた培養液は、0.5リットルで数万円という高価なものだが、その効果は決して十分でなかった。その原因は、細胞分裂を誘導するためのアルブミンに混じった微量の混入物が、安定的な未分化性を阻害してしまうということや、タンパク質の酸化反応が細胞老化を誘導してしまうことなどであった。
ならば、アルブミンを他のタンパク質ではない化学物質で置き換えれば、課題の解決になるのではないか。そう考えられたため、研究チームは有用と思われる物質を探索。その結果として見つかったものが、液体のりの主成分として知られるポリビニルアルコール(PVA)だったのである。
PVAはアルブミンの代替物質として有効であるだけでなく、培養液中で酸化してしまうこともないため、造血幹細胞の老化を抑制しつつ、長期的な増幅が維持できる。
研究グル―プはマウスの生体から1つの造血幹細胞を採取、PVAを用いた培養液で1カ月培養して、放射線を浴びせることで骨髄を破壊したマウスに移植した。結果、すべてのマウスで骨髄の再構築が確認できたという。つまりドナーから採取する造血幹細胞はごくわずかで済み、多くの患者を救うことのできる治療法への筋道に光が当たったのである。
研究の詳細は、5月30日にNatureオンライン版に掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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