NASAの火星探査機「マーズ2020」、宇宙環境を模した熱真空試験を完了

2019年5月30日 08:00

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熱真空試験の様子。(c) NASA/JPL-Caltech

熱真空試験の様子。(c) NASA/JPL-Caltech[写真拡大]

 NASAは5月24日、火星探査機「マーズ2020」が熱真空試験を完了したことを発表した。これでマーズ2020の総合的な性能チェックが済み、打ち上げの準備が整ったことになる。

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■マーズ2020

 「マーズ2020」は、NASAが2020年に打ち上げ予定の火星探査機。現在までの火星探査では火星にかつて豊富な水が存在した証拠を発見した。また火星の過去の環境は、微生物が繁殖できるものと推定されている。

 これらの成果を踏まえて、マーズ2020は火星の岩石や土壌の中に、過去の生命の痕跡や
 生命活動によって生成された物質などの発見が、目標とされている。

■熱真空試験とは

 宇宙空間で宇宙船が正常に動作することをチェックするため、巨大な真空室(模擬宇宙環境)でテストを行う。模擬宇宙環境は下記の宇宙空間の特性を再現した環境である。

●宇宙空間の特性

 ・冷暗黒
 宇宙空間は基本的に真っ暗で非常に低温(絶対温度3K(-270度))である。

 ・高真空
 気体による熱伝導がなく、熱交換は放射により行われる。

 ・軌道熱入力
 宇宙船の軌道により、太陽光、惑星反射光、惑星性外放射が入射する。

■今回の試験方法

 4月26日、テスト用の機体は巨大な真空室(8 m×26 m)に入り、天井からケーブルから吊り下げられた。

 宇宙船は空中に浮いているため、どの方向に対しても熱的には同じ条件になっている。またこの真空室は、壁からの放射が影響することがない程度に、宇宙船に対して十分な広さが確保されている。

 その後気密性を保つため、16トンもの重量があるドアを閉め、真空にするために排気が行われた。続いて真空室の壁に液体窒素を流し込み、壁面は約-130度に冷やされた。

 太陽光線を再現するためには、強力なキセノンランプが使われた。その光が真空室上部の鏡で反射され、宇宙船を照らした。これは惑星反射光だ。そして8日後、ランプが消え、部屋の中に空気が入れられ、ドアが開かれた。熱真空試験は無事完了した。

 なお熱真空試験と同時に、音響試験(振動試験)も行われた。これはロケット打ち上げ時に発生する大きな音(150デシベル)と振動に耐えられるか確認するためだ。150デシベルの音は人間の鼓膜を破裂させる威力を持っている。

 マーズ2020は、2020年7月にフロリダのケープカナベラル空軍基地から発射される予定だ。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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