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月面に水分が存在する理由 地球とは違う水の起源
月面写真。ここにも水が存在しているのかもしれない (c) NASA[写真拡大]
月の研究者たちはつい最近になって、月面の極付近に氷状の水分が露出していることを発見した。アポロが地球に持ち帰った月の石からは、水分は検出されておらず乾燥した存在であったため、月の表面に水が存在することに対しては従来、科学者たちの間では否定的な意見が大勢を占めていた。
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水分の発見に反して、大気が存在していない月面になぜ水分が存在しているのかについては謎が多い。彗星起源説、火山起源説なども唱えられたが、決定打に欠ける。最近の研究によって、月面に水が存在するのは、太陽風によってもたらされた重水素に起因することが示唆されている。
月面でこの重水素が岩石や塵に含有された状態となり、微小隕石の衝突による熱衝撃で鉱物から水分が形成される可能性が唱えられ、地球上での検証実験が科学者たちの間で検討されてきた。つい最近になり、微小隕石の衝突を模して、鉱物への高エネルギー密度のレーザー照射が試され、一瞬にして700度以上の高温に昇温し水蒸気の噴出確認に成功したのである。
月面では太陽風によるイオン照射と、微小隕石の衝突の両方が起きるために水分が存在できたのだという事実が、これで理論的にも検証されたわけだが、このメカニズムは地球上に存在している水の由来とは全く無関係である。
その理由は、地球の磁場が太陽風を寄せ付けないためである。だがこの月での水の由来についての理論は、他の太陽系で大気を持たない天体における水の生成メカニズムをも説明するものである可能性が高い。つまり大気のない天体においても、太陽風が届く限り、その天体では水が存在する可能性があるという結論に達するのである。
月における水の生成メカニズムの解明は、大気の存在しない天体での水の存在を示唆する、画期的なアイデアをもたらしたが、果たして月面に人間が移り住んだとして不自由なく暮らせるだけの水分を確保できるかどうかまでは、まだはっきりしていない。もし十分以上の水が確保できることが明らかになった場合、月面への移住計画が現実味を帯び、一気に加速していくのかもしれない。
月面は引力が地球の6分の1しかない。つまり宇宙へ飛び出すためのエネルギーが地球から旅立つ場合に比べて、極めて少なくて済むため、人類が宇宙に向けて大いなる飛躍を遂げるためには、月をベースキャンプとできるかどうかが大きなカギを握っているのだ。ひょっとしたら宇宙旅行の価格破壊の波が、すぐそこまで来ているのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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