小惑星の衝突から地球を守るための実験 NASAが計画

2019年5月8日 21:25

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小惑星に宇宙船を衝突させ、その軌道を変える実験(DART)の想像図 (c) Johns Hopkins Applied Physics Laboratory

小惑星に宇宙船を衝突させ、その軌道を変える実験(DART)の想像図 (c) Johns Hopkins Applied Physics Laboratory[写真拡大]

 SF映画などで、小惑星の衝突から地球を守るために、小惑星に衝撃を加えてその軌道を変えさせるエピソードがある。一見雲をつかむような話にも映るが、米航空宇宙局(NASA)は実際に小惑星に宇宙船を衝突させ、その軌道を変えるプロジェクトに取り掛かっている。それがDART(Double Asteroid Redirection Test)と呼ばれる実験だ。

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■実験の対象は双子の小惑星

 DARTの対象となる小惑星は、地球に接近する軌道をもつ二重小惑星「ディディモス」である。ディディモスは直径750メートルのディディモスAと、周回する直径150メートルのディディモスBから構成される。ディディモスの軌道は地球の軌道と交差していないため、地球に衝突することはない。だが火星の軌道と交差しており、地球の軌道に接近する。

 一方でディディモスが属する「アモール群」と呼ばれる小惑星以外にも、「アポロ群」のように地球の軌道と交差する小惑星が存在する。地球に衝突すると甚大な被害を及ぼす直径約1キロメートルの小惑星は約700個存在するといい、小惑星が地球に衝突する脅威が認識されている。そこで小惑星の地球への衝突を防ぐ方法として、宇宙船を小惑星に衝突させ、その軌道を変えようというのだ。

 DARTでは、ディディモスBに衝撃を加えることでどの程度軌道が変わるのかを調査する実験が実施される。実験の時期は2022年9月に予定されている。

■小惑星の軌道を変える困難

 ディディモスの観測は2015年から行われている。欧州南天天文台が運営する南米チリにある巨大望遠鏡VLTを使い、ディディモスの観測が実施されている。観測の目的はディディモスの調査だが、ディディモスは地球から離れた小規模の天体であるため、その組成や構造が十分に判明していないという。そこで宇宙船をディディモスに衝突させ、その影響を計測することで、その組成や構造を知ろうというのだ。

 両翼にソーラーパネルを設置したDARTの幅は12.5メートル程だ。この宇宙船を小惑星に衝突させたときの影響についてもはっきりしない点が残る。小惑星は硬い岩や瓦礫、砂などから構成されるが、柔らかい表面の場合宇宙船が及ぼす衝撃は吸収される。

 そこで、米ジョンホプキンス大応用物理研究所は2014年以降、シミュレーションを使って宇宙船がディディモスに衝撃後に起こる出来事の予測を続けている。その結果、宇宙船の構成などが具体化するようになった。

 NASAは4月12日に、DARTで使用される宇宙船の製造に、イーロン・マスク氏が率いる宇宙ベンチャー企業のSpaceXが選ばれたことを発表したばかりだ。DARTが成功すれば、将来地球に衝突する危険性のある小惑星の脅威からわれわれを救うことが期待されるだろう。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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