ガソリンエンジンが良い! (2) 逆転の可能性、石油採掘から走行まで(Well to Wheel)見よ

2019年3月28日 21:48

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■石油採掘から走行まで(Well to Wheel)を見れば逆転の可能性も

 「電気自動車(EV)はCO2を生まない」と単純に言い切れるとは限らない。実際には、ガソリンエンジンから発電にシフトするだけなのだ。すると現在の発電のCO2排出量と、ガソリンエンジン車のCO2排出量を比較すると、どの様になるのであろうか?

【前回は】ガソリンエンジンが良い! (1) 部品点数半減、EV化は大量失業の恐れ!

 現在のHVなど燃費が良くなっている自動車は、「18km/L強」程度で走る車は珍しくはない。むしろ平均的と言えるだろう。すると150g/kmほどのCO2排出量となる。石炭火力発電(200g/km)と比較すると、現在でも自動車のほうが、成績が良いこととなってしまう。

 重油発電では150g/kmとなり、ガソリン自動車と同等となっている。LNG(液化天然ガス)であるとやっと100g/kmで発電が優位に立つ。これに水力・原子力・太陽光・風力・地熱などが加わり、現状では発電平均としては128g/kmぐらいとなり、まだ「石油採掘から走行まで(Well to Wheel)」で考えても、EVのほうがガソリンエンジン車よりもCO2排出量は少ないと言える。

 しかし、現在ガソリンエンジンの熱効率改善が進んでおり(30%→40%)、燃費の改善は2倍以上と、それよりも如実だ。これから「スーパーリーンバーン(超希薄燃焼)」や「HCCI (Homogeneous Charge Compression Ignition)予混合圧縮着火」が開発されていくと、逆転することが考えられる。

 「スーパーリーンバーン」とは超希薄燃焼のことを指すが、つまり、極度に薄いガソリンの混合気で爆発が出来ることを言う。これまでの通常のガソリンエンジンによる混合割合の空気「理論空燃比(ストイキ)」での燃焼熱効率向上が進み、熱効率40%を超えるまでになってきた。これを50%以上にすることが出来れば、EVよりも燃費が良くなる可能性が出てきたのだ。ストイキでの熱効率向上では、多種多様の技術が用いられてきた。さらにガソリン噴射量を半分程度にする技術開発が進んでいる。

■「損失」を防ぐことから「熱効率」を考える

 熱効率を考えるには、損失を考えると分かりやすい。ガソリンエンジンでは、ガソリンを爆発させて運動エネルギーに変えるが、その過程で損失が多大に出る。その代表は、排気・冷却損失だ。両者合わせると50%~70%の損失に達する。これまでのガソリンエンジンの熱効率30%~40%では、そのほとんどがこの損失だ。

 排気では、1000度に達する排気熱とタービンを回せる噴出力が出る。このほとんどが無駄に捨てられてきたのが在来のエンジンで、排気タービンでもその熱までは回生できていない。熱損失では、ラジエターで冷却されている熱全体が無駄に捨てられていることとなる。これを解消すには、「気筒内爆発が低温で行われる」か、または「気筒内から周囲に伝達されない(新圧縮爆発)」必要がある。

【参考】「新燃焼システム」(知恵の輪サイト)

 そのほかに、吸入・圧縮で失われる「ポンプ損失」、シリンダーが上下移動するときの抵抗や、ミッションの高速回転で起きる抵抗など「機械損失」がある。しかし両者合わせても10%程度にとどまるため、やはり排気・冷却損を無くすことが最大のテーマとなる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: ガソリンエンジンが良い! (3) ダウンサイジング、ストイキ燃焼での熱効率向上の努力

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