小惑星リュウグウの起源となる小惑星を特定 はやぶさ2のデータから JAXA

2019年3月22日 21:40

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小惑星リュウグウが母天体から誕生し形成されるまでのシナリオ (c) 杉田精司ほか

小惑星リュウグウが母天体から誕生し形成されるまでのシナリオ (c) 杉田精司ほか[写真拡大]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は19日、小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星「リュウグウ」の探査活動に基づく成果をまとめた3編の論文を、米科学誌Scienceに掲載したと報告した。

【こちらも】「はやぶさ2」タッチダウン時のリュウグウ表面の映像公開 JAXA

 3編のうち1本は、はやぶさ2のデータからリュウグウが誕生した母天体の特定と誕生のシナリオを言及した論文であり、地球上で生命が誕生した謎が明らかになることが期待される。

■リュウグウの母天体の小惑星

 リュウグウは、地球から約3億4,000万キロメートル彼方にある直径約900メートルの小惑星だ。リュウグウのような小惑星は、初期の太陽系で形成された大きな天体の衝突破壊によって誕生したと考えられる。

 はやぶさ2は2月22日、リュウグウ表面へのタッチダウンに成功し、試料の採取活動を行った。リュウグウから回収した試料と太陽系の起源を結びつけるには、リュウグウの進化やその母天体の素性に踏み込んで調査することが重要だという。

 リュウグウの母天体として、直径69キロメートルのエリゴネ、直径55キロメートルのポラナ、直径37キロメートルのオイラリアという3つの天体が候補として挙げられていた。研究グループは、光学航法カメラ、熱赤外カメラ、レーザー高度計から取得できる全球観測データを用いて、リュウグウの地質史を明らかにし、母天体の素性解明に迫った。その結果リュウグウは、ポラナあるいはオイラリアから誕生した可能性が高いことが判明した。

 エリゴネは含水鉱物を多量に含むCh型に、ポラーナとオイラリアは含水鉱物の明確な特徴をもたないB型あるいはCb型であることは既に明らかだった。今回はやぶさ2の探査により、リュウグウはCb型で確定した。そのためエリゴネは、リュウグウの母天体の候補として外れた。

■リュウグウ誕生のシナリオを同時に提示

 研究グループによるとポラナあるいはオイラリアで発生した天体衝突により、小惑星族が形成されたという。8億年ないし14億年前に衝突破片が再集積し、リュウグウの直接母天体が誕生した。その後再び天体衝突が起こり、リュウグウが誕生したというシナリオだ。

 ポラナとオイラリアは、地球にもっとも多くの破片を供給した小惑星だ。C型小惑星は含水鉱物や炭素を含むため、地球の表層環境の進化にも大きな影響を与えてきた可能性がある。そのためリュウグウが、地球や生命の歴史を考えるうえで重要な情報をもたらす可能性があるという。

 ポラナとオイラリアは、衝突分裂の推定年代が大きく異なる。2020年末にははやぶさ2が地球へと帰還することから、リュウグウから回収された試料の分析により、どちらが親か確定することが期待される。

 今回の研究を含む3編の論文は19日、Science誌にて掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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