トヨタ・プリウス販売不振は当然の結果? もはや「HV」で絶対的商品価値は作り出せない

2019年3月22日 16:12

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トヨタ・プリウス(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

トヨタ・プリウス(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 4代目トヨタ・プリウスの評判はかなり悪い。2016年登場直後には、女性からの評判が特に悪かった。それは単純にエクステリアデザインの好みであるが、これは現在の市場の在り方からすると問題である。「フェースが嫌」と言われてしまうと説得のしようがない。プリウスは「たれ目」「歌舞伎顔」「とげとげしている」などと言われ、とりつく島がない。

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 4代目プリウスは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の推進で「GA-Cプラットフォーム」を採用して共通化され、生産性、平準化などに優れている。そればかりではなく、このプラットフォームを採用することによって床下が圧縮されており、車高が低くなっても室内高は十分だ。重心も下がり、剛性も上がってサスペンションセッティングのレベルが上がり、走行性能も安定して、車両の性能そのものが向上している。

 しかし残念なことに、現代のユーザーは「フィーリング」で選択する傾向が強く、技術的優位性をアピールしても「商品価値」に繋がらない。またセダンのウエストラインの低さなど「ワイドロー」の姿は、最近好まれなくなっている。ミニバンなどで育てられた世代には、「太った胴体のSUVスタイル」のほうが「かっこよく見える」ようだ。

 プリウスが2012年に記録した販売台数31万7,675台のような圧倒的売り上げは、「HVだから」といったブームとも言える状況下でのことだった。しかし現在では、HVの車種も増え、SUVにもラインナップされている。ハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオが乗って、「環境に配慮している」ことをアピールできるクルマではなくなってきているのだ。

 現在では「普通のセダン」としてしか評価されず、デザインも若者の趣向には逆行する「ワイドロー」のプロポーションを目指している。これからのプリウスは、「HVの象徴としての商品価値」はなくなり、普通の車両としてパッケージング、デザイン、性能を評価される存在となってきているのだ。

 技術的評価が自動車の商品価値とは直接結びつかない市場の動向に、プリウスは新しい商品価値を身に付けなければならない情勢となってきている。年間10万台の販売も確保できない状況になりつつある現状では、日産の「e-POWER」にも言えるように、トヨタ・HVシステムよりも燃費では劣っていることや、箱根の山を登りきることがぎりぎりであるなど、技術的には最高とは言えなくても、物珍しさなどで評価される時代だ。

 今後EV時代になると、さらに「技術的先進性」は、何らかの「イメージ」と結びつかないと評価されないことを肝に銘ずるべきであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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