オムロン、技術経営の強化で売上高1兆円、営業利益1千億円を目指す

2019年3月14日 08:59

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 オムロンは3月5日、駅における窓口業務の自動化に向けて、利用客からの問い合わせに応対する「駅窓口ロボット」を開発したと発表した。

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 このロボットは音声対話型AIエンジンを搭載しており、駅利用客からの乗り換えや駅構内・周辺情報などに関する問い合わせに、音声とディスプレイでの文字表示で回答する。今後の労働力人口の減少、利用客ニーズの多様化などに対応し、駅業務のさらなるオートメーション化に貢献することを目指して、3月16日より京王電鉄井の頭線下北沢駅で試験運用を開始する。

 オムロンは、立石一真によって1933年、大阪市で立石電機製作所として創業された。1945年には京都市右京区に工場を移転し、1959年に本社所在地の京都市御室にちなんで商標を「OMRON」と制定、1990年社名をオムロン株式会社へ変更した。

 創業者の、よりよい社会のために「まずやってみる」チャレンジ精神と「よりよい社会をつくる」企業理念の下、世界で初めてとなる無接点近接スイッチ、電子式自動感応式信号機、無人駅システム、オンライン現金自動支払機など画期的な技術を次々と開発した。

 前期売上高8,600億円の内、制御機器事業で46%、車載・電装部品事業で15%、ヘルスケア事業で13%、電子部品事業で12%、鉄道の自動改札機など社会システム事業で7%、その他6%の構成比と「検知と制御」の技術経営で大きく事業拡大してきたオムロンの動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は過去最高を更新する8,600億円(前年比8%増)、営業利益は前年よりも183億円増の859億円(同27%増)であった。

 営業利益増加の要因としては、制御機器事業で20%売上増により335億円、海外比率62%の中、前年に比べて円安(1ドル109円->111円、1ユーロ119円->129円)により為替差益72億円の増益要因に対し、セールスエンジニア強化とIT投資など販管費増加143億円、コア技術拡大、新商品開発に向けた研究開発費増加81億円の減益要因によるものである。

 今期第3四半期(4-12月)売上高6,356億円(前年同期比2%増)、営業利益568億円(同12%減)と中国経済の減速、半導体投資の延期など制御機器事業悪化の中、今期見通しは売上高が当初計画よりも450億円減の8,550億円(同1%減)、営業利益は210億円減の720億円(同17%減)を見込んでいる。

■新中期計画VG2.0(2018年3月期~21年3月期)で売上高1兆円を目指す

 労働力の不足、高齢化の進展、温暖化の加速などの社会課題に対応するため、AI、IOT、ロボティクスなどの技術を駆使する技術経営強化戦略により、売上高1兆円(対前期比16%増)、営業利益1,000億円(同16%増)を目指す。

 1.制御機器事業の進化と最強化の推進
 センサー、コントローラー、ロボット、セキュリティまで業界一の幅広い品揃えの強みを生かした制御進化、AIによる知能化、人と機械の協調を推進。

 2.ヘルスケア事業で圧倒的シェア確保
 2016年から2020年の世界主要市場でのシェアを、家庭用血圧計(50%->55%)、吸入器(30%->40%)、低周波治療器(35%->45%)を目指して、他社との協創により医師、患者を結ぶサービスプラットフォームを開発。

 3.コア技術の強化
 東京、米国に技術開発拠点を新設し、外部リソースを活用し、ディープセンシング技術、コントロール技術をAIで結んだ価値あるコンポーネント技術の確立。

 創業から受け継がれてきた技術経営コンセプトで、モノづくり現場の革新に挑むオムロンの動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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