年金で老後の介護・介護施設を活用できる体制づくり ケア21の取り組み

2019年3月13日 08:49

印刷

 起業家が事業を立ち上げる契機も様々である。ジャスダック市場に上場する、ケア21の創業者社長の依田平氏は、商家の出身。「売り上げが、利益が云々」といった会話を常に耳にして育った。

【こちらも】太陽化学が商圏を病院・介護施設に拡げた背景

 小学生時代に作文で「将来は株式投資で大儲けをしたい」と書いたのもそうした経緯からだった。が、教師の「それもいいだろうが、世の中のためになる仕事を考えたらどうだ」という指摘が、依田氏の胸を突いた。「それが介護保険制度施行の2000年にケア21を立ち上げるトリガーとなった」と依田氏は振り返っている。

 訪問介護をまず手掛けた。その理由を依田氏は「誰しも年を重ね介護が必要な状態になっても、住み慣れた家で暮らしたいと考えるはず」と話す。前10月期末現在、訪問介護拠点は地盤の大阪を中心に1都2府7県に149カ所設営されている(内69カ所に居宅介護支援事業所が設営、単独居宅介護支援事業所が他に2カ所)。

 そして在宅介護を基盤に、施設介護にも積極的姿勢をみせている。「介護度に応じご本人のため、ご家族のために整備すべきと判断したためだ」(依田氏)という。前期末時点で「介護付き有料老人ホーム:36カ所」「グループホーム:71カ所」「デイサービス:21カ所」「小規模多機能型居宅介護:16カ所」等が展開されている。そして新年度もそのスピードを緩めようとしない。

 施設介護について同社の最大の特色は料金体系に求められる。中間価格からその下に照準を合わせている。30年余会社勤めをした場合の厚生年金受給額は、ひと月当たり平均18万円前後。対して展開されている施設での費用は諸々の経費を含め17万円+αで入居が可能。評価に値するといえる。「必要条件は満たした上で、決して華美でなくシンプルな施設展開を図っている」(同)とする。

 また周知のとおり「介護従業者の不足」が業界の共通課題だが、同社では「定期昇給」「退職金制度」「資格取得補助金制度」を敷く対応策を執っている。現状で正社員化比率は70%弱。これを80%まで引き上げる方針。ベースとなっているのは依田氏の「どういう人が働いているのか、チームケアがなされているかが肝心。介護にかかわる一人一人が分断されていてはダメ。徹底研修に加え介護士同士の徹底議論を重ね、和を作り上げる努力を常に行っている」という認識がある。

 総合福祉企業という観点から「介護」「障がい者(同社では障害者という言い方をしない)施設」「保育園運営」を展開している。認知症対応のデイサービスを上記の21カ所を含め、デイサービスも実施している小規模多機能型居宅介護事業所と合わせ37カ所で運営。

 施設介護では「看取り」まで行う。グループホームでも訪問医師・看護師と連携し対応している。そして外国人労働者を受け入れ研修・実践を通して外国人介護士を育成、彼らを戦力に海外への進出を視野に入れている点なども特徴といえよう。

 介護報酬「引き下げ」という流れの中、至2020年10月期の中期経営計画で売り上げ380億円を掲げている。前期は11.5%の増収も先行負担から40%強の営業減益だが、今期は53.1%増益計画でスタートした。小学生時代の作文をキッカケに介護事業を起業した依田氏の目はいま「2035年に日本1の業者となる」計画を睨んでいる。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事