アストンマーティン・ヴァルキリーのパワーユニットは1176psマイルドハイブリッド

2019年3月12日 08:25

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「アストンマーティン・ヴァルキリー」。(写真: アストンマーティンの発表資料より)

「アストンマーティン・ヴァルキリー」。(写真: アストンマーティンの発表資料より)[写真拡大]

 「ヴァルキリー」と聞くと、XB-70 ヴァルキリー(North American XB-70 Valkyrie)半世紀前のマッハ3の試作戦略爆撃機を思い浮かべてしまうのは歳のせいだ。「ヴァルキリー」は北欧神話の戦乙女ワルキューレの英語読みだが、戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性である。また「死者を選ぶ者」と言われ、不死鳥の意味と紹介されたこともある。そんなアストンマーティン・ヴァルキリーのパワーユニットは、システム最高出力1176ps/10500rpm、最大トルクは900Nm/6000rpmと公表された。それが、マイルドハイブリッドなのだ。

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 マイルドハイブリッドと言うと小型車で「小出力」とイメージしている人もいるが、元々はF1レースカーやル・マンで優勝したトヨタ・ TS050 HYBRIDなどで装備されていたシステムだ。そのトヨタ・TS050 HYBRIDも、最高出力 735kW/1000PS(エンジン+モーター)となっている。耐久レースのル・マンカーよりも、短距離レースのF1マシンのほうが最高出力は高い。

 アストンマーティン・ヴァルキリーのパワーユニットはF1の技術を基にしているようだ。コスワース製の6.5LV12エンジンは、単体で最高出力1014ps/10500rpm、最大トルク740Nm/7000rpmに電動モーターが加わって、システム最高出力1176ps/10500rpm、最大トルク900Nm/6000rpmとなる訳だ。

 さらに、アストンマーティン・ヴァルキリーのハイブリッドシステム技術の隠れた主役は、「回生ブレーキ」と言ってもよいかもしれない。市販車のマイルドハイブリッドと言えば、低速時の力強さ、乗りやすさだが、レーシングカーでのマイルドハイブリッドは「コーナーからの立ち上がりの鋭さ」となって表れる。

 F1では「KERS(カーズ)」(Kinetic Energy-Recovery System)“運動エネルギー”回生システムと呼ばれていたが、現在では“熱エネルギー”回生も行うシステムになってきた。もっとも運動エネルギー、つまり慣性で動いている車体をブレーキで熱エネルギーに変えて放出していたものを、「発電して電池に蓄積する方法で、電気として回収する」ので、全てのシステムは「熱エネルギーで放出していた」ものを「電気に変えるシステム」と見ていて良いだろう。

 現在、市販車で「回生ブレーキ」と呼んでいるシステムだ。これは、エンジン、EV、HV、PHEVなど、すべての車両で使われるべきシステムと言えよう。それにしても、アストンマーティン・ヴァルキリーのエンジンのレッドゾーン(最高許容回転数)11000rpmはすごい。これはほとんどF1エンジンだ。日常に使うには全く不向きと言えるだろう。F1においても、CO2排出規制を意識してハイブリッドを研究していた訳だが、もうこのような(6.5L)大排気量のエンジンを作ってはいけないのかもしれない。F1、ル・マンに参戦していたメーカーの多くが、フォーミュラEに転戦していった。今後、トヨタはどう動くのであろうか?(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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