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「いきなり!ステーキ」に立ちはだかる前門の「虎」、後門の「狼」
「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスに、「前門の虎、後門の狼」を感じる。
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「虎」はアメリカ市場だ。ニューヨークに2017年2月「いきなり!ステーキ」第1号店を開設以来、僅か2年足らずで11店舗まで一気に拡大を図った。昨秋には米国での知名度アップを狙い、米国ジャスダック市場に上場(ADR:米国預託証券:を発行)もした。が、2月24日、同社は「11店のうち7店を閉鎖する。残り4店のうち2店は業態転換する」と発表するに至った。
その理由は、前18年12月期決算に如実に表れていた。「75.3%の増収、68.1%の営業増益」にもかかわらず「1億2100万円の最終赤字(8年ぶり)」となった。背景は米国子会社を介したアメリカ市場での躓きだった。直営店舗の不振に対し「減損処理」「業務構造改善費用」とし、「特損」を計上せざるをえなかったからである。「意気込んで出かけた米国で、本場のステーキ文化の壁に跳ね返された」と解説される。
「米国ではステーキは気軽に食べるものでない。手軽にステーキをどうぞ、と登場してもノンと言われるのは当然の結果だった」という具体的な指摘も聞かれる。メディアを通じてしかペッパーフードサービスの一瀬邦夫CEOの声は私には聞こえてこないが「壁に跳ね返された」ことは、自身も感じとっているようだ。だが一瀬氏は残り2店舗の再生とラスベガスに「ペッパーランチ」新店の開設を公にしている。
「ペッパーランチ」と「いきなり!ステーキ」の差異は、極論すれば肉の違いでしかない。果たして米国市場での「再生」「新展開」は、「文化の壁」を乗り越えることができるのか。「虎」退治は、決して容易ではないと考える。
今12月期に関しては「47.3%の増収、44.8%の営業増益、純益34億9300万円」計画で立ち上がった。「国内市場は依然伸長」を前提とした形である。が、後門の「狼」は、「決して侮れない相手」とする声が日増しに高まっている。「狼」とは外食産業の専門筋から「外食産業を席巻する」という声まで飛ぶ「焼き肉ライク」である。
焼き肉店:牛角の創業者の西山知義氏が率いるダイニングイノベーション。昨年、第1号店をJR新橋駅近くにオープンした「1人焼き肉店」。これまで焼き肉は家族等のグループで楽しむもの、が相場だった。だが西山氏は「回転寿司に学んだ」としている。確かにいま、回転寿司業界の拡充でいまや寿司は「ふらり、1人で食べられる」時代になった。また西山氏は「初期のいきなり!ステーキに触発された」ともしている。それらの枠組みを焼き肉に持ち込んだのである。
可能な限り肉の値段は下げる。メニューはスリム化。基本は肉・白飯・ワカメスープ・キムチ。ナムルなどはオプション。「1000円+α負担」を前面に押し出した「焼き肉のファストフード」である。外食産業の紙誌の記者会によるその年に活躍をした外食業者を選ぶ「外食アワード2018」で6社中の1社に選ばれている。新橋に続いて西新宿、そして今年は渋谷・秋葉原・横浜・五反田の開店が予定されており「5年で300店舗計画」。「既にFC希望者が数百人を下らない」という。ちなみにラーメンチェーンの幸楽苑が「いきなり!ステーキ」に次いで「焼き肉ライク」ともFC契約を結んでいる。
後門の「狼」も前門の「虎」同様、容易な相手ではなさそうである。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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