何故、伊藤忠商事はデサントに”敵対的”TOBを仕掛けているのか? (3-1)

2019年2月14日 20:56

印刷

(c) 123rf

(c) 123rf[写真拡大]

 伊藤忠商事がデサントに対して進めている“敵対的”TOBの行方が、注目を集めている。“敵対的”という文字がネガティブなイメージを強調してしまうため、調和と協調を旨とする日本社会では受けが悪い。日本では今まで成功例がないと言われるのも“敵対的”という表現に由来するところは多いだろう。

【こちらも】デサントが伊藤忠商事グループによるTOBに「反対」を決議

 TOB(Take Over Bid)とは、上場企業の株式を市場外で、いつまでに、どのくらいの株式を、いくらで買い付けるかを公開して行うことだ。

 発行済み株式の1/3超を取得すると株主総会で重大な決定事項を拒否でき、50%超を取得すると社長を含めた役員を選任できる。TOBをする側もされる側も事前に了解している場合は「友好的TOB」と表現し、事前の了解がない場合を「敵対的TOB」と表現する。

 伊藤忠商事は昨年10月時点で既にデサントの株式の30%を保有している。今回のTOBでは1月末の直前株価に50%上乗せした1株2800円で、10%分の株式を3月14日の期限までに追加購入する。

 デサント側は「大義がない」や、社員や取引先から「応援しているから頑張れ」と言われているとして、TOBに対する嫌悪感を露わにしている。こうした反応が表面化するところがまさに“敵対的”TOBと呼ばれる所以である。

 デサントと伊藤忠商事には、共に米マンシングウェアと提携した1964年から数えても、半世紀以上に渡る風雨を一緒に歩んできた歴史がある。

 70年代から90年代にかけて、ゴルフ人口の増加が続いた時期があった。その時代に一世を風靡したのが「リトル・ピート」という愛称で呼ばれるトレードマークがシンボルの、マンシングウェアのゴルフウェアであった。アメリカでの人気は飛び抜けたものがあり、ゴルフをする際の“制服”のような存在感があった。最盛期には日米のトッププロ130人が愛用していたという。

 64年に、伊藤忠商事と共に米マンシングウェアと提携したデサントは着実に販売額を増加させて来たが故に、大きな挫折を経験することになった。売上増加への過度の期待から、マンシングウェアの在庫が膨らみ経営危機に直面したのが84年、伊藤忠商事の支援を受けて持ち堪えた。98年、当時売上高の40%を占めていた独アディダスとのライセンス契約が解消された際にも、伊藤忠商事の力を借りて乗り切った。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

3-2に続く

関連キーワード

関連記事