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銀行融資の現状に対する素朴な疑問 (下)
問題視されてきた銀行(136行)のカードローン残高は2018年末で前年末比0.8%減の5兆6,995億円と10年末以来のマイナスになったことが日銀の発表で明らかになった。過剰融資の問題が表面化した17年春以降の金融庁の監督強化を受け、大手行が見直しに着手した結果だ。結構なことである。だがこの流れにはこんな厳しい現実がついていることも事実だ。「16年から増加に転じた個人の自己破産(申し立て)数は、18年も前年比6%台の増加が続いている」。
【前回は】銀行融資の現状に対する素朴な疑問 (上)
そして私はいま「スルガ銀行問題」は未だ解決していないと思うし、監督官庁(金融庁)の姿勢に大いなる「?」を感じている。
「スルガ銀行問題」については、いまさら詳細な説明の必要はないと思う。要は「投資用不動産融資拡大の裏で行われた組織的な審査書類改ざん=不正融資」である。が、こんな事実を知るに至って、いま腹に据えかねるものを感じている。
ことに当たっては内部でも反論が強かったというが、金融庁・第2課が地銀各行に対し「(スルガ銀行を救うには)500億円必要だ。(スルガ銀行の)預金に協力して欲しい」と打診したというのだ。推測ではない。ある地銀の頭取から実名を伏せることを条件に「当行(うち)にも奉加帳が回ってきた」と聞いた。金融庁側の説明は「新体制で再生する(今年4月)までの信用補完策だ」であり、暗に「(資金規模3兆円の)スルガ銀行が破綻すれば(貴行への)連鎖も否定できない」というニュアンスだったという。
スルガ銀行はかつて「地銀屈指の優等生」と称された。だが私はこんな事実(=体質)を知っている。某メガバンクから系列のクレジット会社のトップに転じたA氏はその後、当時の大手消費者金融の社長に転じた。その時の土産が「スルガ銀行からの過大な融資枠」だった。仮に年利6%の融資でも消費者金融業界では、いまでは死語かもしれないが「グレーゾーン金利(利息制限法の上限15-20%と出資法の上限金利29・2%の間の金利)での融資)」がまかり通っていた時代だ。件の大手消費者金融業者にしてみれば「こんな美味しいお土産」はなかったはずだ。
またこれは日銀の消息筋から聞いた話だが、「日銀も(スルガ銀行への)資金供給を準備し、救済への動きを示した」という。
確かにスルガ銀行が破綻すれば「金融ショック」が起こりかねなかっただろう。が、地銀の現状を勘案すれば「禁治産者となった地銀は消えても問題ない」という監督官庁の見方が読み取れる。本業損益(貸出金利・金融商品販売手数料-営業経費)が5期以上も赤字に沈みっぱなしの地銀が23行もある。そんなところにまで「奉加帳」は回ったとも聞く。
銀行の融資の現状に加え、金融庁への不審を募らせる出来事である。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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