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経団連中西会長就任初年度を襲う、出身母体関連企業での不正発覚と英国原発の凍結
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18年は日立製作所(日立)の厄年だったのだろうか?日立グループの御三家と言われ、化学材料メーカーの大手でもある日立化成で、不正の発覚が相次いだ。6月に産業用鉛蓄電池の検査データ改ざんが発表され、10月には民生用リチウムイオン電池や自動車用樹脂成型品等の28品目で不正検査が判明し、さらには半導体材料の検査における不正が続報された。
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結局不正は半導体、配線板、樹脂、ディスプレイ向けなどの30品目を超え、何と日立化成の製品群のうちの「半分以上」にも及ぶという。
不正の内容も、顧客との契約に違背した検査をしていたり、検査を怠っていたりという、今や定番の不正のほかに、実測した数値と異なる数値を検査報告書に記入するデータ改ざんまであった。
経団連の中西宏明会長(日立会長)は18年5月に就任した。経済界における総理的な存在であることに敬意を払って「財界総理」とも呼ばれるほどの要職であり、出身母体企業自体が会長職に相応しいことが望まれている。企業としての品格も当然の如く要求されている会長の出身企業群から、不正のオンパレードが公表されては、中西会長にとって座り心地の悪い椅子だったろう。
この不正問題と並行して、日立自体も12年から進めていた英国の原発新設プロジェクトが、折悪しく正念場に差し掛かっていた。
日本は11年の東日本大震災が発生する以前から、国策とも言える海外での原発プロジェクトを進めていたが、同時に苦戦していた。12年に事実上受注していたリトアニアの原発計画は、16年にはリトアニアのエネルギー戦略で計画の凍結に至った。凍結であるため”解凍”を期待する向きもあるが、現実的には解凍は非常に困難と見られている。
英国の原発新設は総事業費が3兆円を超える大規模プロジェクトであったものの、6月にエネルギーを主管するクラーク大臣が、事業の推進で日立と合意したことを声明で発表している。日本の原発輸出政策が何とか命脈を保つかもしれない一筋の光明だった。
資金計画の焦点は、総事業費の約3兆円のうち英国政府が2兆円超を融資した上で、残りの9000億円をどう調達するかだったが、最終的に総額の調達に目途が付かない状況に陥った。微かな希望は英国政府の追加支援であったが、EUからの離脱問題が国論を賑わせている中で、新たな火種を囲い込むことは困難だった。
結局、日立は英国の原発プロジェクトを凍結した。リトアニア同様、解凍の期待はほとんどないが、日立が一方的に打ち切りを宣言した場合に懸念される、巨額の違約金発生を回避する意味合いが大きい。
それでも、英国原発事業の凍結で3000億円もの損失が発生することとなり、19年3月期の決算は連結純利益が前期から半減し1800億円になることが発表された。この場合の営業利益は2年連続の最高益となるが、売上高営業利益率は8%となり、目標としている海外の競合他社並みの10%達成はしばらくお預けとなる。
経団連会長就任の初年度に、出身母体関連企業のガバナンスに大きな疑問符が付けられ、7年間に渡るプロジェクトの挫折が営業利益率目標の未達につながるなど、多難なスタートとなったが、2年目の巻き返しを大いに期待するものである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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